第23話 私の部屋
フェリエッタと
目的の場所は、ミーティングルームから離れた場所にあった。黒薙が、ある扉の前で立ち止まり、その扉を開ける。
「え、ここが私の部屋なんですか!?」
「はい。フェリエッタは、今後この部屋で生活するようにしてください。」
組織へと
フェリエッタは、ふらふらと部屋の中に入ると、
「こんなにフワフワのベッドも、初めてです。」
「どうでしたか、新しい仕事仲間は?」
「皆、いい人そうでした。」
「それは、良かったです。」
黒薙が、横を見ると、毛布に埋もれるフェリエッタの頭があった。彼女の髪は、きれいな白色で、光の辺り具合によっては青く輝いて見える。
黒薙は、ギプスをはめていない方の手を、思わず彼女の頭へとなでようとして伸ばす。しかし、突然フェリエッタが顔を上げたことに驚き、手を引っ込めてしまう。
「というか、クロナギさん、またかしこまった言葉で話していません?」
「え!?」
「あの時は、もっと親しげに話してくれたでないですか。」
フェリエッタは、微妙にムスッとしたような顔で、黒薙に
「あー、今は仕事中ですし、他の人もいたから…。」
「なら、今みたいに私と二人の時はいいですよね。」
「いや、それは…。」
あたふたしている黒薙が、ちらりとフェリエッタの方を覗くと、彼女は無言で黒薙を
「んー、あー、…分かったって。こんな感じで、少しずつでもいい? フェリエッタ。」
「はい、それで全然大丈夫です! ありがとうございます!」
フェリエッタは、嬉しそうな笑みを浮かべ、黒薙に
「それじゃ、私は
黒薙はそう言い残すと、フェリエッタの
フェリエッタは、黒薙を見送ると、ベッドの上に再び転がって寝返りを打つ。
(こんなに広くてきれいな部屋、ホントに私が住んでいいんだ。ありがとうございます。女神トリア様。)
フェリエッタは、部屋の天井を見ながら、初めて感覚を噛みしめていた。そして、この世界に連れて来てくれた女神に感謝するのであった。
もといた世界では、幼少期は
それに、久しぶりに友達も、やさしい仕事仲間もできた。
(…なのに、私の心にひっかかるこの思いは何なんなのでしょう。)
フェリエッタは、
「あ! そういえば。」
ベッドの上でうつぶせになっていたフェリエッタは、黒薙が来る前に
「あった!」
そう言ってフェリエッタが取り出したのは、チョコレートの箱だった。それは、宇奈月に甘いものが好きなことを伝えると、わざわざ買ってきてくれたものだった。
「…これ、どうやって開けるんだろ。」
箱の開け方が分からないフェリエッタは、しばらくの間しげしげと箱を
ピンポーン
部屋の扉の方から響くチャイムの音に驚き、フェリエッタは思わずチョコレートの箱を落としそうになる。フェリエッタが、何が起きたのかと音がした方角を見ていると、次は扉が叩かれる。
(ク、クロナギさんかな?)
そう思い、フェリエッタが扉の取っ手に手をかけると、部屋の鍵が開いた。
扉を開けると、そこには
彼は、鋭い目でフェリエッタを睨みつけていた。
「え? あの、えーと。」
「…ミーティングルーム。」
不意の
「は、はい?」
「…さっきの部屋で、
「歓迎会って、もしかして私のですか?」
「ああ、だから来いって言ってた。」
「わ、分かりました。わざわざ言いに来てくれたんですね。ありがとうございます。」
「で、行くんスか?」
「い、行きますから、ちょっと待ってください。」
そう言って、フェリエッタは
「…それ。」
「え?」
「その箱。」
「あ、これですか。あ、開け方が分からなくて…」
「…貸して。」
「はい?」
「開けるんで、それ。」
そう言われたフェリエッタが、江良川にチョコレートの箱を渡すと、江良川は器用に箱を開けて、中にあるチョコレートを取り出す。
「…これ。」
「あ、ありがとうございます。」
それに驚いたフェリエッタは、思わずその後ろ姿に声をかける。
「あ、あの。」
「…別に、アンタ一人じゃねぇ。」
「え?」
「俺も、最初こっちの世界に来た時は、いろいろ分かんねぇことばっかだった。だから、…ここにいるのは、アンタだけじゃないッス。」
江良川は、立ち止まり、フェリエッタにそう言うと、向こうへと行ってしまった。
彼の
(女神トリア様、私は、この世界で頑張ります。どうか見守ってください。)
フェリエッタは、胸に下げている女神を
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