第二章 回収部の日常編
第21話 新たな出会い
コカトリスの
「あ! クロナギさん、こっちです!」
「フェリエッタ、もう来ていたのですね。」
廊下を歩きだした黒薙は、病室のすぐの近くで待っていたフェリエッタに呼び止められる。その近くには、
「クロナギさん、もう動いて大丈夫なんですか?」
「はい。医者からも、許可は貰っています。」
「良かったですね。」
「宇奈月班長も、本日は
「まぁ、僕にしてやれるのは、これくらいだからね。」
本日は、黒薙の回復を待っていたフェリエッタが、正式に黒薙達が所属する組織IDIOMへと加入した日であった。そして、初めてフェリエッタが、他の第三班の班員と顔見せをする日でもある。
「クロナギさん、早く行きましょうよ!」
フェリエッタは、正式に加入するまで部屋から自由に出られなかった反動なのか、やたらテンションが高い。そんなフェリエッタに引っ張られるようにして、黒薙は進みだした。
彼女たちの後ろから、宇奈月がついて歩く。
「ウナヅキさん! 第三班ってクロナギさんたちがいるところですよね。皆さん、どんな方たちなんですか?」
「あぁ、えーとね。なんというか、面白い奴らじゃないかな。」
「面白い、ですか?」
「うん、面白い。例えばね…」
そこまで答えた宇奈月は、急に足を止める。黒薙とフェリエッタはそのことに気づき、一緒に止まる。
「宇奈月班長、どうしたのですか?」
「いーちゃん、すまん。別の仕事があることを思い出した。後のことは、任せていいか?」
「え?」
「今いる第三班の班員は、全員ミーティングルームに集めているから、あとはよろしく。」
宇奈月は早口でそう言い残すと、
「何かあったんですかね?」
「…まさか。」
「おい! そこにいるお前ら!!」
宇奈月が去っていった後を、
驚いた二人が振り返ると、そこには
その女性の顔立ちは、非常に
「
黒薙は、向かってくる女性に対して軽く
「お前、黒薙だよな。お前のとこのバカ班長はどこ行った?」
猫又と呼ばれたその女性は、黒薙を指差し、そう問いただした。その迫力からは、どこか
「宇奈月班長であれば、先まで一緒にいたのですが、別の仕事があるということで、どこかに行ってしまわれました。」
黒薙は、その女性に
「チッ、逃げられちまったか。悪かったな。」
「いえ。また何かあったのですか?」
「アイツ、今日も会議をサボっていやがったんだ。この前の招集でもトンズラこいた落とし前もあるから、今日こそはきっちり絞めようと思ったんだが。」
猫又は、拳を握り込み、ポキポキと指を鳴らしながらそう答えた。
「ん? そこにいるお前は?」
猫又が、黒薙の後ろで震えるフェリエッタに気づき、声をかけた。
「え、あ! わ、私、フェリエッタ・ウィリアムズと言います。」
「あぁ、あの新しくアイツのとこの第三班に配属された奴か。」
「は、はい!」
フェリエッタが、少し上ずったような声で返事をする。それを聞いた猫又は、どことなく気の毒そうな表情を浮かべた。
「そうか、…いろいろ大変だと思うが、頑張ってくれ。」
「あ、ありがとうございます?」
「黒薙も、宇奈月の居場所が分かったら教えてくれ。」
猫又は、そう言うと、黒薙達の横を通り過ぎていった。フェリエッタと黒薙は、その後ろ姿を見送る。
「えーと、あの方は誰なんですか?」
「あの人は、私たちと同じサイト17
「はんちょう?ということは。」
「はい。宇奈月班長が私たちの第三班の班長なのに対して、猫又班長は第二班の班長です。」
「へー、班長さんにも色々いるんですね。」
「宇奈月班長とは、同期だそうですが、犬猿の仲ということで有名です。」
猫又の姿が見えなくなり、しばらくして黒薙とフェリエッタが顔を見合わせる。フェリエッタは、猫又が最後に何か
「あのー、さっきネコマタさん、確か“いろいろ大変だと思う”って言ってましたよね…。」
「さぁ、他の班員も待っています。先を急ぎましょう。フェリエッタ。」
黒薙は、フェリエッタの話を
「ちょっと、クロナギさん!?」
黒薙に置いていかれそうになったフェリエッタは、急いでその後ろ姿を追いかけるのであった。
「あの、
「…そんなに、気になるのですか。」
フェリエッタが、歩きながら黒薙に後ろから話しかけている。フェリエッタの質問に対して、黒薙は少々言いづらそうに答えていた。
「気になりますよ! だって私、皆さんと違って別の世界から来ているんですよ。ちゃんとこっちの方たちと仲良くできるんだろうか、気になるじゃないですか。」
「なるほど、そこに関しては大丈夫だと思いますよ。ここには、フェリエッタのような人も多くいますし。」
「え!? それって…」
フェリエッタがそこまで言ったとき、黒薙は、同じ扉へと向かっている見覚えのある背中があることに気が付く。黒薙は、その背中の方へと声をかける。
「
「おう、黒薙、お前もな。元気そうで何よりだ。」
黒薙が、扉に向かっている笹平に声をかけると、笹平は後ろを振り返ってそれに返事する。彼の身体には、もう包帯は巻かれておらず、元気そうだ。
「とそこにいるのは…。」
「あ! 私、クロナギさんのバディのフェリエッタ・ウィリアムズと言います。」
黒薙の後ろにいる自分の存在に気が付いた笹平に対して、フェリエッタが一歩前に出て自己紹介をする。
「オッケイ、フェリエッタね。俺は、黒薙の元バディの
「はい。あの時は、助けていただいてありがとうございます。」
フェリエッタは、黒薙に最初に会ったとき、笹平にも助けられていたことについての礼を言う。
「こちらこそ、黒薙のことでいろいろ世話になったらしいな。」
笹平は、そこまで言うと、黒薙の方にも体を向ける。
「黒薙もありがとな。今回の任務では、お前にもいろいろと迷惑をかけちまった。」
「いえ。この程度で済んだのも、笹平さんから頂いた“アイテム”のおかげです。ありがとうございました。」
黒薙は、左腕にまかれたギプスをみせながらそう言うと、笹平に軽く頭を下げた。
「笹平さんは、こちらで何をしていたのですか?」
「俺も、さっき復帰したとこでよ。久しぶりに、他の班員に顔をみせようと思ってな。」
「ササヒラさんも、第三班なんですか?」
「あぁ。だから、フェリエッタとも同僚ってことになる。これから、よろしく。」
「はい! こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
笹平と黒薙たちが、そう会話をしながら進んでいると、目的の扉が見えてきた。扉には、大きく第三班の文字が書かれている。
「ここが、俺たち第三班のミーティングルームってことに一応なってる」
「ここに、皆さんがいらっしゃるんですね。」
「まぁ、そういうことになるな。」
フェリエッタは、
ピピピッ!
笹平が扉にあるタッチパネルを押すと、ロックの解除音が鳴り、扉の
「さぁ、フェリエッタ。これが、俺たちの第三班…。」
ドン!!
笹平の言葉は、部屋から飛び出した何かによって
扉が横にスライドして開くと同時に飛び出した何かは、話している笹平の胴体に直撃し、そのまま彼は後ろへと吹っ飛ばされていく。
「え?」
事態が
「笹平! おぬし、
開いた扉の前に立ち、倒れる笹平の目の前で
その女の子の姿は、着物に
「
「全く、わしが
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
枸橘と呼ばれた小さな女の子は、笹平の
部屋の中では、黒いマスクをした茶髪の男性と、スーツ姿の女性が、椅子に腰かけながら、引きずられている笹平を見ていた。
男の年齢は、十代の
「笹平のおっさん、戻って来ていたのか。」
「らしいねー。」
「おい、助けなくていいのか? あれ。」
「そんなことより、黒薙と新入りの女の子も今日来るらしいよ、君。たくさんの可愛い女の子たちに囲まれて、
女性は、バンバンと男の子の背中を叩きながら、話す。
「…イテェし、アンタは女の子って年齢じゃねぇだろ。」
「なんか言った、君ー?」
「だからイテェって! それ、やめろ!」
「おい!! そこのお前ら、いちゃついてないで俺を助けてくれ!!!」
「いちゃついてねぇ!!」「いちゃついてないけど。」
「笹平よ、修行をサボって負ったおぬしが悪いのじゃ。大人しくせい!」
「誰でもいい、俺を助けてくれ!!」
部屋の中には、
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