おまけ 魔法生物学(コカトリス編)

〇コカトリス属 [Gallusviper]

 雄鶏おんどりの胴体部に、巨蛇の頭部が接合したような姿をしている魔物。異質いしつ同体性どうたいせい多頭たとう類に、属するため、雄鶏側と巨蛇側は全く異なる生命体のように活動するが、器官系は共通のものを使用している。胃袋が二つ、総排泄口そうはいせつこうが一つある。半変温はんへんおん半恒温はんこうおん動物であり、主に巨蛇側と雄鶏側の境界を境にその性質は異なっている。コカトリスは、昼行ちゅうこう性であり、気温の低下する夜間は巣穴にいる。バジリスクなどのヘビ目に、分類学上は近い存在だと考えられており、生殖機能は巨蛇側に集約されている。


 巨蛇側の頭部の眼窩がんかの鱗は、眼球を覆う透明なものであるが、表層に微細な積層せきそう構造が存在している。この積層構造は、光の波長が干渉することによって、特殊な波長をもつ波を発している。魔力を持つ生物は、この波を視覚器から受容することによって、脳内の特異的な脳神経細胞が刺激され、体内に魔力循環経路じゅんかんけいろが構成される。これにより、犠牲者は無意識下において石化魔法を発動してしまい、身体の硬直化が発生する。コカトリスは、硬直化させた獲物を、口内で生成した分解液により、魔法を解除しながら捕食する。分解液は、巨蛇側と雄鶏側の両頭部の口内にある唾液腺だえきせんから分泌されている。石化させる波を防ぐためには、目を、光を偏光へんこうすることができるもので覆う必要がある。


 雄鶏側の胴体部のり爪には、管が通っており、爪にある腺から神経毒を分泌させることができる。この神経毒は、コカトリスの免疫機構めんえききこうによって生産されており、主にタンパク質によって構成されている。この毒の血清は、コカトリスからしか採取することができないため、一部では高級品として重宝されている。


 冬季は、樹洞、岩穴、土穴などに巣をつくり冬眠を行う。雄鶏側の胴体部は完全には冬眠を行わず、冬眠期間には貯蓄ちょちくした脂肪分と捕獲して石化させた獲物を徐々に消費して生活する。そのため、冬眠の準備期間には、コカトリスによる石化被害などが上昇する傾向にある。その他には、ブナやミズナラなどの脂肪分の多い果実を捕食することによって、体内に脂肪分を蓄積ちくせきしている。


 巣穴は、平地から低山帯にかけた草原や川原、農耕地、明るい林などの場所でよくみられる。産卵時期は、初夏にあたる6月から8月であることが多い。直径40㎝から68㎝程の楕円型の卵を、一度に3から5個産卵する。卵は温度変化に弱く、長い間低温にさらされることによって、死滅してしまう。


〇パルビタコカトリス[Gallusviper parvita]

 通常のコカトリスに比べて小型の種。成体の体長は、1.6mから2mほどである。

 ニース地方の気温が低下する11月から4月の期間は、冬眠を行っている。

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