第19話 どうして…
「クロナギさん、どうして…」
「来ないで下さい!!」
黒薙にそう
黒薙は、コカトリスから受けたダメージが目に見えてひどい。彼女は、息を切らせており、
「っ!」
叫んだ反動で、コカトリスに
「大丈夫ですか!?」
その様子を見たフェリエッタが、黒薙に駆け寄ろうと近づく。
「“思ひ
黒薙がそう唱えると、光の壁はさらに
「私は、来ないで下さいと言いました。」
「クロナギさん、どうしたんですか。まさか、コカトリスに錯乱状態にされたんです? でも、コカトリスにそんな能力があるなんて。」
「いいえ。私は正気です。」
ひどく
「じゃあ、なぜそいつのことを守るんですか!?」
フェリエッタが、コカトリスの方を指差しながら言った。
「クロナギさんが、言っていたじゃないですか。そいつは、分かっているだけでも7人も殺しているんですよ。私の世界でも、
「…それは、分かっています。」
フェリエッタの話を聞き、黒薙の脳内に、コカトリスにバディを殺された
しかし、黒薙は、同時にあの男の言葉を思い出していた。
“早く何とかしてやってくれ。”
そう、私たちには、唯一の理念が、守るべき使命がある。それは、あの男も同じなのだ。私は、それを、彼から
「あなたは、分かってないんです! どんなに魔物が恐ろしく、
「確かに、私には、あなたの世界の常識も知識もありません。それでも、私は、このコカトリスを守らないといけないのです!」
「なぜなんです!?」
「それが、私たちの理念であり、使命だからです。私は、ここを離れるわけにはいきません!」
黒薙は、痛む体に
「先は助けていただいたのに、このようなことになってしまって、すみません。」
黒薙は、フェリエッタに助けてもらわなければ、森石に殺されていただろう。黒薙は、フェリエッタと対立している今の状況を、申し訳なさそうに言った。
フェリエッタは、黒薙の謝罪を聞いて、少し黙る。
「…クロナギさんは、私を
「いいえ。それは違います。コカトリスは、私が保護します。でも、それは力のためではありません!」
疑念の声で問いかけてきたフェリエッタに、黒薙は強く言い返す
「このコカトリスも、あなたと同じようにこちらの世界に来たくて来たわけではありません! …本当なら、こちらの世界になんて来るべきではなかったのです。」
黒薙がコカトリスの巣穴で見た物、それは
コカトリスにとって、この世界は、非常に厳しい環境だったに違いない。それでも、この世界で生きようとしていた。
黒薙にとって、巣で見つけた卵は、必死に生きようとした
…たとえ、生んだ卵が、すでにこの世界の低すぎる温度で死んでいたとしても、コカトリスは、この地で生きようとしていたのである。
「こちらの世界に来た責任は、こちらの世界にあります。私たちには、その責任を果たす義務があるのです!」
黒薙は、光の壁の向こう側にいるフェリエッタの目を見ながら、そう言った。
「あなたは、どうしてもその魔物を守るんですね。」
フェリエッタにとって、黒薙の行動は、理解の
「そいつは、別の人を傷つけるかもしれないんです。それでも、クロナギさんはそいつのことを守るんですか?」
「…はい。それが、私たちのするべきことです。」
「私には、それが正しいことだとは思えない。魔物は、殺すべきなんです。」
フェリエッタは、そう言うと、黒薙に手のひらを向ける。
「クロナギさん、そこを、どいてください。」
「いいえ。どきません。」
両者は、光の壁を間に
二人の沈黙を破ったのは、意外なものであった。
グェェ!
黒薙の背後で、低いうなり声がなる。驚いた黒薙たちが振り向くと、気絶していたはずのコカトリスが、起き上がろうとしてもがいていた。
コカトリスの
「そんな!? こんなに早く回復するなんて!」
フェリエッタは、立ち上がろうともがくコカトリスを見て、つい声を上げる。
「うっ!!」
黒薙は、すぐにコカトリスに向けて
「ハァ、ハァ。」
黒薙の意識は、
黒薙の意識が
バランスを崩した黒薙は、その場に倒れてしまう。黒薙が倒れると同時に、コカトリスの周囲を囲っていた光の壁が、消えた。
「クロナギさん!!」
フェリエッタが、苦しそうに倒れている黒薙の近くに
グェェ! グェッ!
彼女たちのすぐ目の前では、意識の回復したコカトリスが、
「ウィリアムズ、さん。」
かろうじて意識を取り戻した黒薙が、コカトリスの方に向かっていくフェリエッタを止めようと、手を伸ばす。
だが、その手が届くことはない。
フェリエッタが、コカトリスの前までやって来る。コカトリスは、満足に体を動かすことが出来ず、横たわったままもがいていた。
フェリエッタの手が、ゆっくりとコカトリスに向けられる。体を動かすことが出来ない黒薙は、その様子を遠くから
「“我が
フェリエッタが、
「“我が敵をその身で
魔法陣の中央に、水滴が集まっていく。
「“
黒薙の叫びと共に、水の
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