第18話 反撃開始です
「な、なにをした貴様!」
森石が、頭を
「なにって、
森石の方を振り返ったフェリエッタが、答える。
「乗っ取った!?」
「はい。よく
「くそったれ! …そいつを、早く締め殺せ!!」
森石は、コカトリスの方に向けて手を伸ばして、命令する。黒薙を締め付けている蛇の頭に、力が込められた。
「させません!」
それに対抗するように、フェリエッタが、森石に向けて手を伸ばす。
「ぐぅぅ!」
森石は、また自分の頭を押さえて、地面に転がった。
黒薙を
それを見たフェリエッタが、黒薙のもとに
「大丈夫ですか? クロナギさん」
「は、はい。し、しかし…」
黒薙は、片膝を立てながらそう答えた。彼女は、コカトリスから受けたダメージが
「大丈夫です。すぐ終わらせますから。」
その様子を
「ぐっ。貴様!!」
「…私にかけていた、隷呪魔法を解除しましたね。まぁ、悪くない手です。」
フェリエッタが、森石の方を、
「くそ! …こっちに来い、化け物。」
森石が命令すると、黒薙を締め付けていたコカトリスが
コカトリスは、黒薙とフェリエッタに対して
「今からが、本当の貴様らの最後だ。…いけ、化け物。」
クルッ! シュルルルー!
森石の命令と共に、コカトリスが不気味な鳴き声を上げる。翼を大きく広げ、フェリエッタを目掛けて飛びかかる。
「“我が
フェリエッタの
ビシャン!!
コカトリスの
鉤爪による
バシャン!! ビシャ!!
蛇の体当たりと、雄鶏の斬撃が繰り返されるコカトリスの
「“創成したるは青 我が敵をその身で貫け
バチン!!
フェリエッタが、コカトリスの隙を見て、水弾を放つが、その水弾は、
フェリエッタとコカトリスの戦いは、
(…後ろに、私がいるからだ。)
フェリエッタは、後ろにいる黒薙を守るために、その場から動くことができなかった。フェリエッタは、コカトリスの攻撃が、黒薙にまで届かないようにして戦っていたのだ。
「ハハッ! さっきの
コカトリスの後ろから、森石が
「…もっとだ。…もっとやれ、化け物!!」
森石の命令で、コカトリスはさらに攻撃の手を速める。鉤爪だけではなく、
黒薙は、フェリエッタの後ろで、
「ウィリアムズさん、私を置いて逃げて下さい! あなただけなら助かるはずです。」
「私は、もう逃げません! 私は、私のするべきことをします!!」
フェリエッタは、次々と繰り出されるコカトリスの攻撃を受け止めながら、答えた。
バシャ!!
コカトリスが、鉤爪で水の盾を大きく切り裂き、ひと
「“創成したるは青 瞬に
それを見たフェリエッタが、素早く詠唱をする。彼女の伸ばした手の先に、青色の魔法陣が現れる。
「“
フェリエッタの手から、
弾は、蛇の頭に着弾すると、
蛇は、氷に
水の盾は、一つ前の攻撃でその大半が切り裂かれて、失われていた。もう、フェリエッタを守っているものはない。
「ハハハッ! 死ね!!」
森石の
コカトリスは、鉤爪を振り上げた状態で、突然動きを止める。
「は? おい、どうした! 早く殺せ!!」
森石が命令するが、コカトリスは動かない。
バタァン!!
そのうち、硬直したコカトリスは、バランスを
「どうなっている!? 何が起きている!!」
「体温が急に奪われたことで、ショックを起こしたんですよ。」
フェリエッタが、コカトリスの様子を見て焦っている森石に向かって、冷静に答える。彼女は、ゆっくりと森石のことを
「コカトリスは、蛇と鶏の
「なんだと!?」
「自力で体温を安定にできない蛇の頭部が、私の“
「馬鹿な! たかが尻尾が凍っただけで、ショックで全身が動けなくなるなんて…。」
「いえ、それは違います。尾は
「へ!?」
フェリエッタの主張に、森石が間抜けな声を上げる。
「かなり昔のことなんですが、蛇と雄鶏の
「そ、そんな。」
「それに、かなり水を浴びていましたからね。雄鶏の羽毛が
それを聞き、森石はガクッと膝を折り、その場に座り込む。
「あぁ! どいつもこいつも俺の邪魔をしやがる!!」
森石が、手に持ったライフル銃を構える。その銃身は、フェリエッタを狙っていた。
バァン!!
森石が、ライフル銃の引き金を引く。だが、発射された
バァン!!
森石が2発目の銃弾を発射するが、それも水の盾が受け止めてしまう。受け止めた銃弾が、その水の盾の中にぷかぷかと浮かんでいた。
「爆発による
その浮かんでいる銃弾を観察しながら、フェリエッタが
「くそッ! くそッ!」
必死に次の銃弾を
「ま、待ってくれ。俺たちは、私たちの一員として迎え入れてあげたんだ。君は、救われたのだよ。なぜ、そのことが分からない?」
森石が、迫りくるフェリエッタに対して、意味の分からない
「君は、この世界に来ることで救われるんだ。俺は、君の敵ではな…。」
「“我が創生したるは青
フェリエッタが唱えると、青い魔法陣から水の鎖が出てきて、森石を縛る。
「貴方は、私に隷呪の魔法をかけ、しかもクロナギさんを傷つけようとしました。」
フェリエッタは、自分の手を、森石の顔前にかざした。
「…でも、ヒトとしての命は、我らの父たる神ディケムから与えられたものです。あなたがヒトである限り、ピュタゴレア教徒の名において、私は貴方のことを
「“我が
フェリエッタの詠唱と共に、淡い青色の魔法陣が現れ、森石の顔が水の球に覆われた。
「グゴッ、ゴボッ。ゴポポポ。」
森石は、水の球の中で息苦しそうにもがいている。顔に貼りつく水の球を
「少し、眠ってください。」
森石の体の力が抜け、だらりと手を下したその時、顔を
「やっと、コカトリスを退治できます。」
フェリエッタが、離れた場所に倒れているコカトリスに向かって手をかざす。
「“創成したるは青 我が敵をその身で貫け
フェリエッタは、動けずに横たわっているコカトリスに
だが、その弾がコカトリスに当たることはなかった。弾は、
その光の壁の向こう側に、彼女がいる。その彼女は、痛む左腕を押さえながら、コカトリスの前に立っていた。彼女が、コカトリスを守ったのだ。
「何をしているんですか。」
フェリエッタには、どうして彼女がそんなことをしているのか理解できない。
「…クロナギさん。」
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