仲を深める二人

 それからというもの、汐音は毎日歌い、琢海たちは必要な分だけ海の幸を獲りました。必要な分はすぐに獲れるので、前よりも早く村に帰ることができました。琢海たちはその分漁具の整備や家族の時間を増やすことができたので、汐音に大層感謝しました。

 やがて琢海は汐音の歌を覚え、いつしか二人で仲良く歌うようになりました。男衆はそれを微笑ましく思いながら眺めていました。ある男は目を細めて、お二人さんお似合いだなぁと言いました。二人は照れましたが、悪い気はしませんでした。

 ある日のこと、いつも通り琢海たちは汐音の歌を聞いて舟を出しました。汐音は琢海たちに気が付いて胸を弾ませ泳いできました。琢海は汐音に尋ねました。

「おはよう汐音。今日は貝が欲しいんだ。どこにあるかな?」

「貝ですね。待っててください」

 そう答えて汐音は海に潜っていきました。しばらくして再び顔を出すと、その手にはサザエやカキ、アワビといった様々な貝が抱えられていました。汐音は海底と海面を何度も行き来し、琢海たちは貝を分け合いました。やがて必要な量があつまったので、琢海たちは汐音に感謝して浜に戻っていきました。

 琢海たちは村の人たちに貝を売りました。その中に手のひらほどもある大きなアコヤガイがありました。そのアコヤガイも村の人に売れました。

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