第7話

 家から出られなくなってから数日が経った。家から出ないので、冷蔵庫の中などの食糧もほとんどなくなってきている。非常食にも手を出してしまったので、あと何日耐えられるかわからない。

 

 「お母さん。お腹空いたよ。」


 「ごめんね。もうご飯がないから我慢してくれる?」


 「ええ〜。」


 そんなやりとりが何度か繰り返されたとき、外が騒がしくなってきたことに気がついた。

 もうこの生活に慣れてきたので恐怖も薄れてきたため、カーテンをめくって外を覗いてみた。

 

 「お、お母さん!ヨセフ!」


 そう。外を見ると、ロシア軍が集まっていたのだ。

 この家まで少し距離はあるけれど、今外に出たら

 見つかってしまうだろう。


 「クリスティーナ、ヨセフ。静かにしてね。絶対に音を立てちゃダメよ。あの人たちが離れてくれるのを待ちましょう。」


 お母さんは私達に手招きしながらそう言った。


 それから1時間ほど経った頃、私たちの家の前で話し声が聞こえた。


 「きた。」


 ヨセフがそう言って、みんなで身構えたとき、ヨセフが横にあった机にぶつかった。


 ガンッ!


 それほど大きな音ではなかったはずだけど、外に聞こえてしまったかもしれない。

 

 「どうするの!?」


 「お母さん、お姉ちゃん、ごめんなさい!」


 そのとき、


 ガチャリ。


 家の扉を開ける音がした。

 そして、トン、トン、と階段を上がる音が続いて聞こえてきた。

 冷や汗が額をつたった。

 その瞬間、私の覚悟が固まった。

 お母さんは今までたくさん私の面倒を見てくれてきた。だから、今こそ恩返しをするときなんだ!


 「お母さん、ヨセフ!今までありがとう。2人のためだったら私は何でもできる気がするの。」


 「クリスティーナ!何する気!?待ちなさい!」


 お母さんが私のことを止めようとしてくれている。

 その声を背に、扉を開けてお母さん達のいる部屋から離れた。

 そして、ロシア軍の人をお母さん達からできる限り離した。

 でもすぐに追いつかれてしまった。


 「おい!待てよ。」


 ロシア語だ。やっぱりロシア人だ。

 

 がっしりと腕を掴まれて、外まで引っ張り出された。

 太陽が眩しい。外に出るなんて何日ぶりだろう。

 いや、今はそんなこと言ってる場合じゃない。

 周りを見渡すと、1人のロシア人が顔を真っ青にして立っていた。

 その人と私を引っ張り出した人が言い争いだした。

 いきなり仲間割れしたように見えた。

 そして、私を引っ張ってきた人が私の家に向かっていくのが見えた。


 「待って!だめ!そっちには...」


 そのとき、目の前が真っ暗になった。そして、意識が朦朧としてきて足場がなくなったような感じがした。

 一瞬のことだったけれど、取り残された人と目が合った気がした。




 この物語はフィクションであり、実在の人物とは必ずしも一致しません。

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