第3話
ウクライナに到着した。たくさんのミサイルや戦車などの兵器が用意され、攻撃準備万端な様子だ。国が攻め込み始めたのは2月24日なので、街はすでにボロボロだった。
他の軍が攻撃を始めたらしく、離れた場所から砲撃音に紛れた悲鳴が聞こえてくる。足がすくみ、後退りをする。そんな俺を見たセルゲイは、
「大丈夫だ。俺たちのしていることは正しい。」
そう言って笑った。
俺とセルゲイは二人で行動することにした。ウクライナはまだ対応が追いついていないらしく、ウクライナ国民は俺たちロシア軍からただ隠れることしかできないような状況だ。
砲撃音が鳴り響く街を2人で歩いていると、ちょうど横を通りかかった民家から物音が聞こえた。
「ちょっと待ってろ。見て来てやる。」
民家に入っていくセルゲイのたくましい背中を見送って数分後、セルゲイは抵抗する女性の腕を引っ張りながら出て来て言った。
「アルティオム!すごいもん見つけたぜ。コイツがいたんだけどよ、高く売れそうな置物が大量にあったんだよ。」
嬉しそうなセルゲイの顔は欲に満ちていた。
「セルゲイ?高く売れそうな置物って…どうしたんだよ。まさかお前、奪って売るつもりか?お前、国のために戦うって言ってたじゃないか。」
セルゲイの顔が曇った。
「おい、アレクサンドル。今更何を言っているんだよ。そんな綺麗事言ったところで何にも得しないじゃないか。それにこの状況じゃあ何を奪ったって罪には問われないよ。」
そう語る彼は俺の知っているセルゲイではなかった。あんなに励まして、勇気づけてくれた彼はどこにいってしまったのだろうか。
「そんなことしてはいけないよ。この国の人だって俺たちと同じ人間なんだ。この人たちの大事なものを奪ってはいけない!」
「そうか。アルティオム。よくわかったよ。お前はもう友達でもなんでもない。お前とは気が合うと思っていたのに。コイツのことも好きにしろ。役に立たなそうだしな。お前がなんと言おうと俺は俺の好きなようにする。」
そう言ってセルゲイは掴んでいた女性を俺の方に突き放し、俺に背中を向けてもう一度あの家に入って行った。女性は気を失っていた。
俺はその女性を抱えて人目につかない路地裏に入った。あそこに留まるのも危険だからな。
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1時間後
女性が目を覚ました。俺を見た途端、死を察したような顔をした。怖がらせてしまって申し訳ない。
「怖がらなくて大丈夫だよ。殺すつもりなんてないから。君、名前は?」
「クリスティーナ。18歳。」
「あの、殺すつもりがないなら助けて欲しいの。家族があの家に残っているの!」
俺の顔が青ざめた。
「しまった。セルゲイが!」
2人で家に向かって走った。とにかく全力で。
この物語はフィクションであり、実在の人物とは必ずしも一致しません。
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