第3話 中二の出会い
二年のクラス替えで、俺は佐々美夏と同じクラスになった。
席決めのくじ引きで、俺の後ろになった、お喋り石川が手を挙げた。
「百八十三センチもある村田君の後ろでは何も見えません!」
その一言で、俺と石川は席を変わり、佐々美夏と隣になった。
そのあとの委員決めで、佐々夏美は面白片鱗を見せた。
推薦で学級委員にされた俺と内海と言う女子が進行を始めた時だった。
突然佐々夏美が、立ち上がった。
「私、美化委員やります、そしたら会が早く進むでしょ」
面食らった俺たちに、追い打ちをかけたのが石川だった。
「佐々さん偉い! みんなもこうでなくちゃ! だったら俺も美化委員やります」
一番人気のない委員が、決まったことでクラス中大喜びだ。
あっと言う間に、他の委員も決まり、続いてクラスの係決めに入った。また、佐々美夏が立ちあがる。
「推薦がありなら、村田君は掲示物係が良いと思います」
突然の指名に、俺が絶句していると、内海さんが理由を尋ねた。
「それは、村田君が歩く脚立だからです」
一瞬教室は静まり返る。次に大爆笑。俺も吹き出していた。終ってみれば、俺と石川と佐々夏美が掲示物係になっていた。
本当に佐々美夏は変わっていた。国語、社会は勉強熱心だが。理数の授業は寝ている。理由は簡単。嫌い。それだけだった。
ここまで、はっきりしている奴は見たことなかった。
数学の内田先生が、どんなに説教しても変わらない。俺は、見かねて助けしてしまう。そんな時佐々美夏は、必ず弁当のおかずをくれる。いつもササミカツだ。好きなものは飽きないと言い切るところも面白く思えた。
秋の文化祭に二年は、女子の創作ダンスを発表することになった。学年で20名選ばれる。
振付けは、なんと佐々美夏だった。
選曲は、体操の先生と佐々夏美で候補をあげ、学年で候補曲を聴き、挙手で決めた。
クラッシック「ボレロ」対ロック「サマータイム」俺のまったく知らない曲だった。どちらも格好良かったが、僅差でイギリスのロック歌手ジャニス・ジョブリンが歌う「サマータイム」に決まった。イギリス=ビートルズしか浮かんでこない自分が情けなかった。
文化祭当日、女子のダンスは大好評だった。みんな上手かったが、佐々美夏は、輝きを纏い自信に満ち溢れていた。
「村君! 石ちゃん見てくれた!」
踊り終わった佐々美夏が飛んで来た。
石川が褒めちぎる。
「石ちゃんありがとう!
でっ?」
佐々美夏は俺の顔を覗きこむ。
俺は佐々美夏を避けながら
「近いよ! まあ良かったんじゃない」
と、答えると佐々美香は鼻で笑い、
「なにそれ、でも村君らしい」
そう言うと、佐々美夏は女子達に呼ばれ、体育館の方へ走って行った。
俺は、その後ろ姿を見送りながら鉄太のことを考えていた。
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