第2話 中一の別れ

 俺の両親は小学校の教師。

 その父親が浮気をした。家は、毎日嵐が吹き荒れていた。五歳下の弟は、両親の罵りあう姿に怯え、俺としか話しをしなくなってしまった。

 夏休み直前、俺たちの願いも空しく離婚は決まった。

 七月の終わり、母親は泣いて嫌がる弟を引き摺ながら出て行った。

 弟の泣き叫ぶ声が消えて行く。

 俺は、玄関を飛び出し掠れる声で、何度も母さん!と呼んでいた。

「ゆう」

 振り向くと、幼馴染みの山田鉄太が立っていた。

 俺は慌てて目を擦った。

 鉄太は黙ってチョコボールを差し出した。

 俺が受け取ると、鉄太は何も言わずに走り去った。パッケージに小さく「がんばれ」と書いてあった。

 静かすぎる夏休みは終わり、冬を迎える頃には、父親との二人暮らしが日常になっていた

 学校では、クリスマスを意識して、告白ブームで盛り上がっていた。俺にも好きな子はいる。同じクラスの阿部ひとみだ。活発で勉強も出来る。結構気が合っていると思っていた。周りからも上手くいくと言われ、調子に乗って告白したら速攻振られた。

 俺は、ショックのあまり金輪際告白はしないと心に誓った。

 同じ頃、鉄太も陸上部の女子に告白をしていた。

 鉄太は涼やかな目元にすっとした鼻筋。これで身長がもう少し高ければ、南城政樹にも勝てると、女子から騒がれていた。その鉄太が告白した女子は、当然注目の的だった。俺は、鉄太たちが楽しそうに話している姿を見るたび、正直釣り合わないと思っていた。

 それほど地味すぎる女子だった。

 ある日、帰りが鉄太と一緒になった。俺が、あの女子のどこが好きなのか聞くと、鉄太は真顔で答えた。

「佐々美夏はね、笑顔がもの凄く温かいんだ。それに性格が面白い」

「鉄? そんなんで告白するか?」

「ゆう、お前はまだまだだな。俺はね、美夏の笑顔と心に温められているんだよ」

 俺は、益々判らなくなってきた。鉄太は、俺の呆れ顔をよそに、その佐々美夏のことを楽しそうに話していた。

 三学期が始まると、鉄太は始業式から三日連続で休んでいた。

 俺は、鉄太の担任に頼まれ、プリントを持って鉄太のアパートを尋ねた。何度ベルを鳴らしても返事がない。思いっきりドアを叩くと、隣の人が顔を出した。

「山田さんなら、昨日の夜遅くに出て行ったよ。奥さんと鉄ちゃんだけで」

 青天の霹靂だった。俺は急いで学校に戻り事情を話すと、担任は愕然としていた。

 俺は、鉄太の父親が暴力を振るうことを知っていた。もう限界だったのか。

 翌朝、登校すると鉄太の話しでクラスは持ち切りだった。

 聞こえてくるのは、いい加減な噂話ばかり。俺は悔しくてしかたなかった。

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