道 ササミとムッシー
紫陽花の花びら
第1話 プロローグ
蝉はこの暑さにも負けず盛大に鳴いている。
ポストを見に出た私の目の前を、プール帰りの小学生たちが、ふざけ合いながら走って行く。
当たり前のように「気をつけて」と声をかける。
小学校の校長をリタイアして二年になるが、これだけは直りそうにもない。
私は、額に滲む汗を拭い、郵便物を取ると急いで家に入った。
ソファーに腰を下ろす。
汗が一気に引いて行く。
チラシの間から、『北市立北中学校・同窓会案内』と印刷されているはがきが見えた。
今更同窓会でもないと欠席に印をつけ、そのままハガキの存在を忘れていた。
その晩、寝酒のウイスキーを楽しんでいるとラインが入った。
中学時代からの悪友石川からだった
『同窓会出席するぞ。それから驚くな! 佐々が来るらしい。約半世紀ぶりのご対面!』
佐々! 忘れられない名前だった。私は、グラスをサイドテーブルに置くと、押し入れから学生時代と書かれた、段ボールを引っぱり出した。雑然としたなかから『想い出』と書かれたノートを手に取る。一枚の写真が滑り落ちた。
そこには、髪を二つに結び、まん丸顔でくしゃくしゃに笑っている女子が写っていた。
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