第7話  生肉~~

 格子の間から、生肉を投げられて俺はギョッとした。

 すみれちゃんは菫ちゃんで、俺が牢屋の中で火を焚いてるのビックリしていた。


『お前!!、ここはそれは厳禁だぞ!早く消せ!』


『やだよ、寒いじゃないか~ こんなふきっ晒しに閉じこめるんだもんな~ 俺は、寒さに弱いの。風邪をひいて死んだら、どうしてくれんの?』


『それこそ、食ってやるよ』


 ん?なんて言った? 菫ちゃん。

 菫ちゃんは重要な事を言ってたのに、俺は聞き逃したんだ。


 俺は、投げ込まれた肉の匂いを嗅いで腐ってないか確かめた。

 大丈夫そうだ。何の肉だろう……? 塊をボン! だもんな。


 それを見ていたすみれちゃんは怒り出した。


『客人に振舞うに変んな食べ物を出すほど、私たちは落ちぶれてないぞ! それはこの島にいた鳥を家畜化して殖やしたんだ。捌きたてだぞ」


 なるほど、鳥ね。捌きたて……なら、鳥刺しにでもして薄く切ったら

 食べられる……? 

 食べられるかよ!!

 俺は、投げ込まれた肉の埃をはらって、良く見ると大きな鳥の胸肉のようだ。

 すぐさま、焚火に持って行き、炙りだしたね。

 そして、俺の料理人見習いのために、おじさんが特別に作ってくれたミニ包丁。長い航海になるからと魔法をかけてもらって、錆びないようになっていた。

 お守りのように、持っていたのが幸いした。


 肉は、あっという間に焼けて、表面の焦げた所から、食べてみた。

 非常にたんぱくな味だ。これなら塩味が欲しいな……


 異常な視線を感じる……

 そちらの方に視線を移すと、菫ちゃんが盛大なを出して俺を見ていた。


『そんな食べ方もあるの?』


『鳥の丸焼きなんて、古典的な食べ物だぜ。食ってみるか?」


『良いの?お前の食い物が減るわ』


『こんなに食いきれないよ、やるから、近くに来いよ』


 菫ちゃんは、素直に俺の格子の近くに来た。

 俺は薄く切った、肉の切れ端を菫ちゃんに渡した。

 それを素早く受け取って、口に頬張る菫ちゃん。


『美味い!! 世の中にこんなに美味いものがあったのか?』


『大げさだなぁ、いつも何食ってるんだよ?』


『だから、このラムージオ島の本来のあるじだ。我々は、無節操な狩りをせずに、繁殖の道を選んだんだ。この鳥は我らの食料なんだ』


『この鳥の生肉だけ~~ ??』


『おかしい?』


『いや、もっと違う物も食べられるのに……と思って』


『違う物?』


『ここは島じゃん。しかも暖流の通り道、魚がウジャウジャ獲れるところだぜ』


 菫ちゃんは驚いた顔で俺を見た。


「それは、美味いの?」


「美味い!」


 俺は、断言した。

 おじさんの店は、海鮮だって美味い店だ。

 そこで修行している俺だって、見様見真似だが、料理くらいできる。


 菫ちゃんは、まだ見ぬその味に思いを馳せ、トロンとした目をしていた。









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