第5話  モフモフの女の子

 俺は、気が付くと、砂浜に打ち上げられていた。

 俺の隣には、アウグステが大事に持って来た長刀が包みのままあるじゃないか。


 思い出した!!

 あの時、アウグステは、傾いた船を立て直すのに手いっぱいで、これを投げて何か叫んでいたんだ……。

 俺は、咄嗟に長刀に手を伸ばした。魔法がかけてあったらしく、俺は沈むことなく、波を漂ってここに漂着したんだな?


 何処だ?


 …………なんか、物凄い視線を感じるのだが……?


 顔を上げると、俺のことを遠巻きに見てる人……?じゃないぞ……

 だって、この人たちの耳は、俺たち人間と違ってて、犬(?)みたいに立ってるし、おまけに尻尾もあるじゃないか~~!!


 すげぇ遠巻きに見てるのな。俺のこと。

 その中で、可愛いモフモフ耳の女の子が来る訳だよ。


『あなた誰?何処から来たの?』


 この言葉聞いたことがあるぞ。聖典の中の言葉だと思うぞ?

 今は、共通語が発達して使われなくなった、古代レトア語だ。

 これは、俺の信心深さのためされる時だ。

 叔父さんに言われて、聖典は暗唱してる。言葉は通じそうだ。


『俺、ペール・ルイス。嵐にあって船から落ちたんだ』


『あたしは、すみれ。この島で一番最後に生まれたの。みんなの言葉を伝える。みんなは、そのが怖いと言っている。それを捨てたら世話をしてやるがどうする?』


『これは預かり物だから、捨てれないよ。多分迎えに来てくれると思うから、少しの間だけで良いから、島の隅っこの方にいさせて欲しい……と責任者に伝えてくれるかい?』


 すみれちゃんは、茶色の髪を揺らして去って行った。

 尻尾はちゃんと上に向いてるぞ。

 すみれちゃんは、少なくとも俺には好意的だ。


 だが……遠巻きの連中の中には、俺に敵意をむき出しの者もいて。

 でも、俺もこんなところで死ぬわけにはいかない。

 このが、何なのか知らないけれど、のおかげで、俺には優位に交渉が進められてるみたいだ。


 すみれちゃんが戻って来た。


『分かった。でも、その刀は決して使わないと約束して欲しい。それから、お前の仲間が来ることは無いよ』


 すみれちゃんは、可愛い顔をしてガツンと言った。


『なんで?』


『この、ラムージオ島は、閉じられた島だからさ。もここで楽しく生きることを考えなよ。そして、早くその刀を海に捨てな。 二百年もすれば、ぺエルにも耳や尻尾が生えるはずだ』


 二百年!?

 耳と尻尾? 誰に?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る