第3話  アウグステ・エル・ロイル

 銀髪の長い髪、瞳まで銀色の超美人は、東方の出身で今はアルテア王国の王立学院に在籍している学生だそうだ。

 名前をアウグステ・エル・ロイルといい、大事そうに細長い包みを背中に背負っていた。


 剣でも背負ってるのかな?と思ったくらいだ。

 このご時世に? もう魔族も、神もいないって言われてるこの時代に?

 剣なんか必要なのか?


「お前の心の駄々洩れだな。……ペールといったか。しばらく共に過ごすのだから、仲良くして欲しい。聞きたいことがあれば聞いて欲くれ。勘ぐられて勘違いされるのは、学院で懲りている」


 アウグステは、現在学院を停学中らしい。

 停学に至った理由は、また聞くとして彼女が乗り込んで船は直ぐに出航した。

 俺は、ここでも驚いたんだけど、アウグステが、今回の風の魔法使いだった。

 船長がにやけて、彼女に挨拶に来た。


 俺は、早々に料理の下ごしらえのために、クリフさんの待つ厨房へ下りて行ったけど。


「ペール!! 今日は、最初の日だから、豪勢に肉の丸焼きと行くぞ」


「クリフさん! そんなに食材を無駄にして大丈夫ですか?」


「海路は、暖流の通り道で魚も多いんだ。干し肉や乾燥野菜ばっかりだとみんな飽きるからな。魚を釣って、提供してるんだよ」


 なるほど。

 狭い船内で、同じ面子めんつで役一年。

 船員さんは、それ以上もあるんだ……。

 俺もほとぼりが冷めるまで帰れない……


 あの子、アウグステはどうなんだろう?学生なのに一年以上も休んで良いのか?


 俺が、炭に使うスコップを取りに、デッキに向かうとアウグステがいた。

 船の最先端で、浮かび、船に方角を指示しているみたいだ。

 あの細長い包み物は、相変わらず背中に背負ってるんだな。


 次の日にどうしてもが気になった俺は、アウグステに聞いたんだが何か。

 アウグステが言うには、彼女のお祖母さんからの預かり物なんだと。

「この刀は主を求めてる……とか言ってたな」


「誰かの愛刀? 昔の勇者とか?」


「さあ? おおやけにそんな記録はない。抹消された勇者の持ち物かも知れん……この刀は沢山の魔族の血を吸っているから、神殿に預けられていたんだ。分かっているのは、そろそろこの刀も神殿の外に出たいんだと。神殿に置いておいても悪さをするらしい」


「悪さ?」


「勝手に、神剣の間を出て行って、娼館で見つかる……とか」


俺は大笑いをしてしまった。


「で、停学の理由は?」


今なら答えてくれると思って、俺は聞いてみた。


「女の子に告白されたんだ」


決まり悪そうに、アウグステは呟く。


「はやりの百合?」


「――じゃなくて、本気で男だと思われてたんだ! 私はそんなに女に見えないか? その子が自殺未遂事件なんて起こしたから停学中!!」



 ええ――っ?? 銀の切れ長の瞳も、通った鼻筋も、薄い唇も白磁のような肌も世間一般で言う所の美人さんだよ!!

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