第9話


「…あんた、見たところ体も丈夫なんだから、働きなさいよ。盗みなんてサイテーのすることよ。」


汗をびっしょりかいているカゲに冷たく言い放つとカゲはすぐにずるずると座り込んだ。

案外、というか…なんというか…

弱い…。

力の抜けたカゲの手首を掴み、市場に戻ろうという時だった。

「あら!あらあらまあまあ!カレンじゃないの!!」

頭上からキンキンと声が降ってきた。院長だ。

「どうしたのこんなにかかって!心配したのよ!?」

院長はつるに絡まれた階段を駆け下りて、河川敷に降りたった。

そして、文句が止まる。

「…もしかして隣の方は…」

院長は、ニヤリとした。

「あの、院長違います。壁ドンみたいな感じになってますけど、私達そういうことじゃなくて…」

ラブストーリーが好きな院長は、案の定一人で舞い上がっていた。

いつのまにかカゲの分の部屋を作る話まで勝手に進め始めている。

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