第7話

影が振り向いた。

そして、長い前髪の隙間からその瞳を見た時、


奇跡が起きた。

サファイアのような瞳が、カレンを捉える。その瞬間に雷が落ちたように衝撃が走った。紡ぎたかった言葉が、すらすらと出てくる。

気がつくと、カレンは影の目の前で、昨夜の作り話を語りきかせていた。

理性など吹っ飛んでいた。

「…へぇ。面白いじゃん。それどっかに応募したら。いいとこまで行けるかもよ。」

皮肉なのか本心なのかわからない少し暗めの笑顔が、とても美しかった。

この人がもっと知りたい。

「あの、名前は?」

影は少し考えた。

「…捨てた」


…捨てた?


触れてはいけないような気がして、カレンは目を背けた。

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