第3話

「あの、院長さん。」

そう話しかけるだけで、もう院長の顔はぱっと華やいだ。

「あら!カレン!あなたもこのわんぱく坊主達に言ってやってちょうだい。この子達、あなたの言うことならなんでも聞くんだから。せっかく掃除した廊下もあんなに汚して。」

「でもこの子達、泥遊びなんてできるの今だけでしょう。大人になったらそんなことできなくなるし、まして学生になったら。」

カレンはそこで言葉を切った。

自分達には親がいない。

偏見に打ち勝って職に就くためには、良い頭がなければ話にならない。

良い学歴を持っていても、偏見に勝てない人間もいるくらいなのだから。

「この子達は勉強漬けになってしまうんですから、今ぐらいいいじゃありませんか。」

院長は少し気の毒そうな顔になった。

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