第41話  超級大発見

 僕はここでしくじってはいけないとさらに慎重に探査機を操作した。

「ウーんデータが不完全だ」スックから報告があった。

この間7分程。

ワームホール内の探査機往来は基本自動航行になる。行きと帰りの運転判断は操縦席手元にデータで分かるようになっている。

帰りの表示が出ているのでそのまま、入り口へ帰還するように指示操作した。

「1個くらい不完全ポイントはある。次だ。」

僕は舵を切った。

「移動するぞ」 

小型機を背後のゲートポイント付近に反転させ手順通り右舷から探査機を突入させた。

ここまでで約30分の経過。

可視で確認できる状況は残り30分。前方のウィンドウから見える景観でも3個は軽く確認できる。

マップでは後方の2個も確認でき、この大群が2層状態になっているのが分かった。

スックが横で全面景観のマップを完成させて、完全な方法で表示してくれた。この間5分。


 「1個目突入だ」

「チょっと気が軽くなったろ? 」

さっきの不完全ゲート、ノーポイントをチエックしたことだ。

「うん。頭冷えたよ」

僕は再び青い波間に探査機を滑り込ませた。

「……データ拾えてないな」

スックが頭上の簡易のデータを読んでいた。

「まだ、突入して数分だよ」

「オっ。口調が戻った」

スックの言葉に僕は無言でフキダシて苦笑いした。

うーん。手早い操縦とこの状況に慣れてきた僕にへんな間があった。

やっぱり不完全かな?などと考えが頭をよぎった後、なんか内蔵がギュンとした感覚と背中が温かいような寒いような不思議な感覚がやってきた。先程から情緒が乱高下しているからか、宇宙酔いか?まあ稀有な体験中だと自分に言い聞かせて舵を取った。

 「データ入ってきたぞ」

僕も頭上の簡易表示に目をやった。

「……大きい」僕は静かに呟いた。

「…まだ内部質量計測だ」スックは頭上のデータを見ながら横目でチラリと僕を見て呟いた。

「正式データを待つよ」

明らかに往路の採取中なのが分かる。手元の操縦桿グリップの右横の航路でも確認した。

5分。長い。まだ往路だ。整備されてない完全ゲートホールの場合リアルの船舶航行より探査機の往復時間は、ものの数分で終わる。

良質なポイントか。はたまた、またもや不完全ポイントか。

結局この面持ちになるので僕は再びうつむいて苦笑いになった。

「オい。見ろ。突入時の正式データが上がってきた」

「……」

数字が桁違いに入り口から侵入するにつれて跳ね上がっていく。

入り口序盤でこの数字で移行していったら中は?

正式データとして上がってくるのだ。当然探査機は出口へ到達している。

これだとちゃんとした完全版のポイントだと安易に推測できた。

「シー! 」

「わ!黙って」

僕は三度興奮した

「出口映像はまだだよ!」

亜原子粒子の数値が桁違いだ。その他も。燃料系の予感。

「ギャー!」スックの声がコックピットに響いた。

画像データにコウフン。僕たちは座席から立ち上がるように中腰になった。

高エネルギーのプラズマビームが惑星から吹き出てジェット流になり紫、ピンクから白へと色鮮やかにに両端に舞っていた。

「すごいよ!大アタリだ」

「手付かずのガス惑星だ」

ジュピタークラス?

もう興奮してメインデッキは大パニックだ。

僕らは言葉にならない声を発してはしゃいだ。体はデッキを転げ回りたい衝動だけど操縦舵は手から離せない離すわけにはいかない。足はバタバタシしたがるし。でも探査機は復路航行中で大事なデータ採取中、ぼくがここでしくる訳にはいかない。

頭上の簡易データを見て興奮し、正式データを見上げてさらに興奮し。

ヘラクルスA 3c348ポイント座標12459876

燃料系未開拓惑星の真ん前出口のゲートポイントを発見!

ホール内は大型船舶が2機が同時移行できる程の質量を持つ。オレンジ色の探査機が再び僕らの目の前に現れる前に正式採取データ解析内容を頭の中で叫びながら。

もう叫ぶしかなかった。やったぞ。

「優勝だ!」

口から飛び出てくる言葉はこれしかなかった。

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