第40話 湧昇とポイント
ハント計画は当然何パターンか考えるけど航路順序も何パターンか用意してある。
いくつか候補があるものの中で途中で削った航路。それが丁度この近辺であった。また
一箇所ポイントがあるっぽい場所は去年調べていた。でも当然未確認だ。またこの宙域は前調査で高ゲートポイントは望めないけど、小型機のウェーヴ機能確認をしながら探索できると判断した。無人小型調査機も同様だ。この予定で進みたい事をスックに告げると彼はスンナリ承諾した。
「時短になるしな」とは彼の弁。
早速階下のハッチを開き小型調査機を出した。そうこうしている間に
「なんか同じ回遊魚があたりを飛んでないか? 」と外の風景がいつもと違う事に気づいた。安定した宙域に脱出したのにこの大量の魚達はいったいどこから。
「コんな嵐のようなものが立ち去ったあとの周辺宙域では湧昇という現象がある。ほんの1時間もしないうちに散らばっていなくなるぜ」
「この魚たちはスックでいうところの回避遊泳なの? 」この種類をあまり見かけないので珍しく観察しているとどんどん驚く程増えてあたりを遊泳しだした。
「なんかこの数分ですごく増えてない? 」数が数だけに驚いた。まるで地球史の授業で見た海中のような光景だった。イワシの大群を思い出した。
「アあもっと増えるぜ」
もうこの宙域あたり一面がこの種類の遊泳魚で埋め尽くされてるのではという光景になった時、この回遊魚が塊で旋回している隙間があった。この風景も授業でみたなぁ。と思いながらのその隙間にはっとした。
僕は宙域での地図の記憶力には自信がある。
この隙間の位置がポイントと思わしき所と合致しているのだ左舷十一時の方向。
すぐ計画マップを数枚立ち上げる。あった。これだカニ座宙域、未確認2枚目にファイルしてあったのとほぼ同じ場所。
「…スック、この位置」
「オっ。今考えてる事、見た目で分かるぜ」
「うん。」僕はトリ肌が立った。
「…ゲートを避けて旋回している」
「アあ。」
「すごいよスックこの目視だけで4箇所もある」
「急げよ。コイツら1時間でいなくなる」
「1時間なんて余裕だ!だって無人機を送り込むだけでデータ収集できる」僕は興奮で早口になった。
ええっととつぶやき僕は言葉かどうか分からない言葉を発し、額に手を充てながら無人機を操作し続けた。いつも余裕の操作なのに手汗が凄く自分がどのくらい興奮しているのかが分かる。
インディゴブルーの宙域に同じ系統の青光りするこの魚たちはまるで宙域の波自身に見えた。
大量で舞い、僕を誘いからかっているようにも見えた。
僕は要領良く、ハッチ手前近距離から順にオレンジ楕円形の無人機を送り込んだ。大量の波に吸い込まれてもどの位置からでもこの機体は目視でも確認出来る。楕円の形は障害物にあたっても傷つけず、自ら傷つかず。改めて探査機に開発した意図を感じ取りこれらの事が頭の隅によぎる。
でも僕の2本の腕は次々と要領を覚え旋回する魚の隙間に楕円形のオレンジ球体を操作していった。
「スック、データはちゃんと採れてる? 」
「アぁ、ちゃんと転送してきてるぜ」
「簡易的でもいいから情報をくれないか? 」
「1番目のはまぁ、ポイントになる中程度だ。容積。距離どれも中程度だ。」
「次は?」僕は3番目に向って無人探査機を移動させながら、データの解析をスックに報告してもらった。
「小型機後ろのカメラでもポイント目視でトレースしておいてくれないか? 」
僕は相棒に続けざまに指示をした。
「マぁ慌てるなって。穴場にぶち当たって興奮してるのはわかるけどな」
僕は真っ赤になってついに大声になった。
「…興奮するよ!あのボソンのぶち当たりはこの穴場へのぶち当たり招待状だったっ」
「アぁ!であの浮遊は優勝への導き流星だ」
早く、次のポイントをマッピングして欲しくて、つい顔をスックに何度も向けながら
「後ろのポイントマップをくれ!」
「へーへー。オ前言葉づかい、いつもと違うぞ」ソラよっとばかりに後ろのカメラ映像を全面ウィンドシールドに切り替えた。「ワぁー前見えないじゃんっ」
スック笑いながら冗談だ。と自分の触手を伸ばして、調査の終わった前方右半分に切り替えてくれた。
「オ前、声のトーンまで違うぞ。大丈夫か? 」
興奮がさらに高まってくる所でこの冗談は
「真剣なんだよっ」と声がさらに裏返った。
「ポイントはトレースした。マップに出すぞ。」
僕は4つ目に突入した。データはスックが継続して報告してくれた。1コを除き2コはまぁまぁのポイントになる。
スックが3個目の情報をくれた頃、画面が4つ目の情報採取に切り替わった。
「どう? 」
「マだ採取中だ。焦るな。操作に集中しろ」
この4個目に入って数分、ここまでのポイント郡と違う。データ採取に時間が掛かっている気配だ。
(…アタリか? )
データ採取に時間がかかる場合は2種ある。
1つ目はゲートとして不完全でワームホール内の質量の測定が安定してない、出口も完全な現存する宙域へ通じてないなどの理由のあるもの。これらは当然正確なデータが採れないので時間がかかる。
2つ目は良質なゲートの場合。ワームホール内の質量が大きくかつ出口の先が遠距離で、出口先の宇宙座標がキチンとデータ採取出来る好条件下にある。出先の情報、画像等の収集撮影。出口からまた入り口へ探査機が帰ってくる時にホール内の移動時間計測。質量計測と採れるデータを採りながら飛んで帰ってくる出来のいいホールの場合もまた時間がかかる。
僕はここでしくじってはいけないとさらに慎重に探査機を操作した。
「ウーんデータが不完全だ」スックから報告があった。
この間7分程。
ワームホール内の探査機往来は基本自動航行になる。行きと帰りの運転判断は操縦席手元にデータで分かるようになっている。
帰りの表示が出ているのでそのまま、入り口へ帰還するように指示操作した。
「1個くらい不完全ポイントはある。次だ。」
僕は舵を切った。
「移動するぞ」
小型機を背後のゲートポイント付近に反転させ手順通り右舷から探査機を突入させた。
ここまでで約30分の経過。
可視で確認できる状況は残り30分。前方のウィンドウから見える景観でも3個は軽く確認できる。
マップでは後方の2個も確認でき、この大群が2層状態になっているのが分かった。
スックが横で全面景観のマップを完成させて、完全な方法で表示してくれた。この間5分。
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