第36話 自由浮遊惑星
僕はソファを倒してベットにし毛布を出したりして休む準備をした。機内に持ち込んだボックスをカバンから取り出してサイドテーブルに置き。いつものホルンヘルスまたはコーディエライトと呼ばれる楽器を吹いた。
♬❏
ピアノの
「教官とメイグリーンがつかみ合いのケンカの授業風景を一度同じ出立デッキエリアで目撃したんだ。僕らはフォンデルタール飛行の授業の前の説明を上の昇降口付近の廊下で聞いてたんだ。下の出立デッキが良く見えてて、下のケンカの風景が良く見えた。何せ先輩が高速機の教官とつかみあってる場面だから僕も一緒にいたピーコックブルーやブリックベージュやマスタード達と驚いて見物していたらそこに…」僕はありありと脳内に残っている記憶をフラッシュバックした。
通りがかったゼラがメイグリーンの練習着の襟をつかみ机にある鉛筆を取って歩くかの様な動作で、そのままメイを引きずって歩き去っていった。後ろの襟だからメイは尻もちついて大の大男のメイが小型犬か何かみたいに見えたんだ。あの当時は一年生だったから驚きと動揺が先の感情だったけど。あの光景を何年後に思い出しても、もう笑いしか込みあげてこない。
「オまえ 余裕だな」
「こういう時だからこそだよ」舌からホルンフェルスを浮かしてスックに答えた。
「アあ。メイのあの姿は今でも思い出したら笑えるよ」
さらに僕は顎を浮かして顔をそらして彼をみると腕組をしながら、立ち去るボソンの姿をモニターで見ているようだった。
また僕は曲を吹きながら思案した。
ゲートの出口でボソンにぶち当たったってこと。小型機だから推進部と動力供給の深部に影響が出た。
つまりはあのゲート出口付近の高レベル電磁波の衝撃で動力系統に不具合が現れた訳だから、真四角の予備の動力を設置台に取り替えるとか、割と船体内の不具合を物理的なもので差し替えるとかで故障が直る。
けどその後は?小型機が推進できるようになったとしてもこのエリアを移動しているうちにまた不具合は出る。
そうすると結果は同じ。じゃあどうやってこの宙域を脱出する?
リタイヤか…と一瞬だがその考えが頭をかすめた。いや。リタイヤはイヤだ。
またソトを眺めながら思案する。こんな状況なのか全く違う様子に見えるし、実際色味も違って見える。この現状から逃れるかのような僕の脳裏に、毎年の風景が蘇る。
今年の宙模様は珍しいが未体験ではない。そこを軸に考えを膨らませていった。
あの子供の頃、船低チェックで命綱ロープ一本で宙域に流されそうになった。あの光景を思い出す。ポッドに引き戻った後のソラ。
「…」ポッド船内から移動しながらみたソラ。あの時見たものを。あの時何時間も僕の心臓の動悸が続いた。初めは船低移動から宙域空間へひとり流されそうになったショックだと思っていた。
船に戻り、1時間程しても小さい動悸のような鼓動がずっと続いているのに気づいてなんだろう?と幼心に思いながらずーっとソトが気になった。程なくして停泊していた船が緊急発進のようにその母体が揺れて移動を始めると、数分後にあの小さな奇妙な形をした
ゴツゴツした表面の岩石のような質感。濃淡ある焼き炭色のような色合い。スーっとその体躯で泳いでいくように目の前に現れ消えていった。その間約数十秒、目視できる範囲では1分程。僕は消え去ったあの奇妙な岩石惑星のかけらの方向をいつまでも眺めていた。
ボーっと眺めていた、さっきの乗り組員のコープが僕に話しかけてきた。
「おい、カラト今の見たか?さっきの事といい、あの浮遊自由惑星といい。今日は奇妙な日だ」
あの惑星のかけらが急接近してきたから、船が進路を読んで避けた事や船低検査機からひとり流されそうになったその後の僕の様子を見に来たと説明した。
「今日は乱流電磁波の値がすごい。さっきのヤツも関係していたのかもな」
「あの浮遊自由惑星のこと? 」
僕はコープに訪ねた。
「防護服を着ていたから大丈夫だと思うが一応館長が検査を受けろとお達しだ。医務室へ行こう」
僕は彼に促されながら、立ち去りがたい気持ちで先程浮遊自由惑星が通った場所が見えた光景を何度も振り返りながら医務室へ向かった。
僕は曲を演奏しながら子供の頃を思い出していた。無意識に演奏が止まった。
「……スック」
「ナんだ? 曲は続けないのか? 」
僕はソファから両肘を付きながら起き上がる体制で彼に振り向いた。
「お願いがあるんだけど」
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