第32話 順位

 2機建ての探査のコツが実地でつかめてきた僕らは最初のポイントへ向かった。先程の未申請の場所からさほど遠く無い場所。このへんはまだあまりうちの学生も探査した記録がないエリアで先程の未申請も含め、僕の勘では[ある]エリアなのだ。

 早速、腕慣らしとばかりに2機建て探査を開始する。それっぽいのが早速1個みつかり、続けてその範囲からの予想である別の範囲の距離を移動し探査、10分ほどで波動散乱の応用で見つかる。


 これは効率がいいと僕は心でガッツポーズだった。さらに嬉しい誤算があった無人探査機を飛ばしての発見だからそのままホール内へ突入させ、ホールの質量、熱量、出口の有無等のデータをすぐに収集出来る。そして、最初の1個目に戻り。また無人探査機を突入させる。

 以前は計画マップの1個1個のポイントを壁にピンで挿す感じでその周りから探査して発見する感覚だった。

今度から、計画マップ上を小さい四角□のカード上に切り取り、その範囲で捜索してポイントを見つけ、あればすぐデータを収集。まさにここらだと計画したあたりは短時間で広範囲にくまなく捜索出来るのだ。僕らはこれには興奮した。1年過け計画の捜索エリアマップの予想が当たっていればこれはかなりの数のポイントが見つかる。

 マップを□に区切り探索済みのカードが並んでいく様に狂喜乱舞した。まさに理想の探査方法だ!僕らはこの序盤で優勝という文字が頭にチラついた。


 ホール内の調査は細かく言うと、跳んだ先の宙域座標、画像、ワームホール内質量、時間等結構な項目がある。調査初期段階のこれらのデータは、報告シートに反映される。これらを、最終的にエントリー者が任意で申請ボタンを押すと初めてコンテスト本部へ送信されリアルタイムで得点と順位が発表される

 丁度、同時期にエントリー中の他生徒とも競えるし、どのくらいの発見数、得点かというのも順位表も見れば分かる仕組みとなっている。


 今年の僕らの調査時間は去年と比べて3分の一の時間で発見出来るようになったのと、合計で約2倍の数を発見出来た。次の計画の探査区域へ移動する。

 蟹座宙域方面へ近づくような移動をしながらの探査になる。次のエリアの探査も3分の一の時間で調査を終えた。ここまでで開始から合計15個、高得点につながる良いコンデションのもの3個、座標さえ合えばすぐ整備着手になりそうな有力候補1個

発見したポイントはもれなく報告した。

 「出たぞ」スックが緊張した声を上げた。

僕は振り返ってソファが置いてある後ろの順位画面を見た。

「よし!2位だ」

「2位だ! 」1日目で2位!手応えが今現実となった結果が目の前に広がる。僕らは静かに興奮した。メインデッキの士気も上がる。グレイ3日目、発見数は当然向こうが多い27個。

「3基でこの数か。んー」スックの声が明るい。

 「僕らと彼らの機体性能の差はほとんどないな」明るい気分になる。おそらくまだ向こうは高コンデションのポイントがなく、ほぼ発見した数のみのポイントだ。夏季休暇は始まったばかりなので僕らの順位が全体の順位だが1人2週間の日程の総合得点なので、新学期が始まる11日前の最終日までエントリー者全員の総合順位は出ない。

 ちょっと興奮しすぎてオレンジ色になってるスックは彼なり冷静になろうとしているのだろう。声のトーンを落としてつぶやくように

「ヨし、グレイをイシキしない。イシキしない」








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