第31話 スックの能力
「……」僕を見透かしたようにスックは僕を見下ろしてこう言った。
「今、お前が考えている事分かるぜ」
「そりぁ、そうだろ」僕は腕を組みながらさらに頭を後方に反らした。
「まあ、黙ってたのは船体を操縦するのに俺を連れているのは利点があるのは想像がつく。でもお前学生だろ?この3年目で確信した。これ、黙ってて良かった事だ」
「…」僕はその体制のまま彼の言葉を聞いていた。これ、グレイも気づいてた!
「あっ」俺はとっさに頭を戻し彼を再び仰ぎ見た。
スックもグレイがどう自分を見ていたかを述べた。
「アいつ、入学前や入学当時に俺にちょっかい出して来ていたのは、もちろんこれもあったと思うよ」
「僕らの出会いの場所の関係だと思っていた」僕の父さんの仕事先について船に便乗していた時、スペースカーゴの積み荷に紛れていた彼を僕は偶然見つけた。そのスペースカーゴ船はゼラやグレイのお父さんの会社の動力エンジンを輸送していた。今でもこのエンジンは改良を重ね他星系にない船舶の優良重要部品である。この部品製造を筆頭に数々事業で成功した彼らの父とカイヤナイト製品の輸送業で頭格を表した僕の父。
グレイは丁度製品搬入時に彼が遊泳しながら船の中へ入って行くのを目撃したようだった。彼が会社の管理部の者ら数人を連れて、船の出発前にあのスックを発見し、引き渡せと要求があったが、その時点で僕はスックを保護した形だった。僕らはこれら一連の事を彼らに告げず、父は船内捜索をきっぱり断り、定刻どおりにカーゴ船は出発した。
後にグレイと僕は同じ学園に同じ年に入学をし、僕はスックをバディ申請してあのフォスフォファー寮に入寮した。当然彼はあのときのスックが今目の前にいて寮生活を始めたので気に入らない様子はすぐに態度で示し始めたのだった。
「人類種と生活をともにしていると俺も感覚が人類種寄りに変化していくし、僕が出来ておまえが出来ない事の差みたいなことの気づきはいっぱいある」
「宙域は俺の生息場所そのものだ。でも人類種は宙域を機体や船体を操縦しなければ飛べない。宙域を飛ぶのを主にするビエクル科の学生には良い利点が俺らの関係であると想像したんだろ」
「君から色々教えてもらえると思ったのか? 」
「どうだろうな。学年が違うがオクトパスのバディ連れてるの見かけるだろ? 」
「あーうん」
「あの関係も観察していると思う。1年目の後半ではちょっかいの頻度が少なくなったろ? 」
「そうだね」
「宙域生命体の個体の性能と人類種の相性もあると思う。どう俺と付き合うか、俺がどうお前と暮らし、付き合うか。ここに入学して3年、お前以外との人類種との付き合いもある。言葉や文字も覚え、生活環境を覚え、俺の脳や体がお前達の文化環境に慣れて、学習してるんだ」
「文化環境…。学生っぽい言葉だ」
「オ前の取る授業内容はざっと頭に入ってるよ」
「授業の教室にはずっといないのに? 」
「俺は学生であるお前のバディだからだ。他のバディ同様、行動をともにしない時は他の授業中の教室に入らず。手の空いた職員、スタッフの認識出来る範囲の場所での単独行動を許される」
「いつも保健室か視聴媒体保管庫か、昼休憩前のカフェテリアにいる」
「他のバディも似たような行動だよ。校則だ」
「アと、単独の学生とバディ連れの学生の成績の差を必ず学園側は考慮している」
「学期末にバディ連れの学生は別途テストがある」
「俺も試験を受ける。他学生に対してズルがある要因、及びそれに伴う結果があったか、もしあった場合どの程度か。外部審査会を立ち上げ学園側と協議し対策、対応をする」
校則の文言をお互い言い合うやりとりを繰り返した。
期末のバディ連れテストにはスックの頭の構造や考え方、生活態度の微細な変化など人類種と暮らしを共にする上で時間経過に伴う変化の観察も兼ねている。カイヤナイト星系で宙域生命体をペットのような存在で暮らす僕らの種族は多くもないが少なくもない。当然、これらで人類種に弊害が及んだケースはその程度にかかわらず報告され、その後共生可の判断され政府に認可された歴史がある。
その共生の歴史結果としてペットより一段階引き上げになる公共の場でのパートナー的存在での生活も認可となり、学生が学業の場に同伴や一緒の寮生活が許されるようになった。
そして一緒に暮らしていてお互いのコミュニケーション上の上達等の気づきは良くある
「自分の成績に関わる発見を俺に対して気づいたもんな? 」
彼は黙って考えてる僕の心を読みとるかのような言葉を言った。
「そうだよ、毎日僕ら話し合えてるけど、スック自身の能力はスックにしか分からないからね」僕はまっすぐ彼を見つめた。
「俺だって毎日お前と暮らしていて気づきの連続だよ。毎日ビエクル科の生徒と寮暮らし。色んな機体に一緒に乗り、有害波を受けずに宙域を飛べるなんてとんだカルチャーショックだったよ」
(…美白王子。)僕は彼の方向に手のひらを見せ、
「このカミングアウトでキミの視覚能力を新たに知ることになっていい機会を得たよ」
「他生徒にとってズルになるかどうか、ボーダーラインはどこにあるか? 」
「僕らの環境ではいつもその問題はついてまわるし、そこがメインだよ」
「前が社会人だったら違ったのか? 」
「倫理の問題だね。これは僕らが別れるまでずっとついてまわる問題でもある」
「頭冷えたか? 」
「まあね。キミの特殊能力についてはいくつか知ってるし、それらの中のうち進化した能力もあるだろ? 」
「俺がお前らの言語文字を覚えることによって、文章が読めるようになってお前らの文書を理解出来るようになった」
「コンテストルール規定とその違反についてを読んで理解したかったんだろ?それでグレイを打ち負かしたかったんだろ? 」
「ああ」
「でもキミのポイント感知能力を僕に提示してこないのはなぜ? 」
「オ前と居られなくなるからさ」
僕は一瞬驚き言葉が出てこなかった。
「……キミと一緒にいられて驚きの連続だよ。毎日飽きないよ。学園内で僕のあまり知らない人とも仲良いし、そのうち僕より友達作るよ」
「アあ?俺だって驚きの連続で退屈はしない」
「まあ、でもキミの能力を今、知ってしまっても僕らのやることは変わらない。1年かけた計画を実行するまでだよ」
「今こうしてるのも船内カメラで録画されてるし、計画変更となって新技繰り出してハントしたって、上手く行くかどうかだ」
「お!分かってるね。スック」僕は驚いた。
彼にとってはこだわりどころのグレイ絡みの勝負事なのに。そしてスックの告白を聞いてやっと驚きから立ち直った僕は冷静に彼に言った。
「2年の経験で学んだ。このハントコンテストは付け焼き刃の新技が通用するほど甘くはないんだ」
「アあ、続きをやろうぜ」
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