第30話 BHとWH

 太陽系もゲートと反対要素BH123。その強力な重力でその周囲を公転している。と太陽系天文学の授業で習った。強力な熱量を持つ底は大きな重力を持ち、太陽系とその周辺の星々はこのBH123を中心に廻っている。BHはその中に突入しても一方の出口は存在しない。僕らがゲートとして使用するWHのポイントは出口を持ち、双方向で行き来する事が出来るものもあれば、一方方向のものもある。


 BHは吸引力のみの力と面積の拡張という変化で銀河系に大きく相互作用していて、その力は大きいものになると恒星や惑星を吸引するが如く星々をひっぱる力を持つ。WHは惑星を吸引する程の力を持つものは発見されていないが大きいものになると物体が一方向に通る面積が大きいため、宇宙の交通としての用途で開発すれば、沢山の物体が同時に通り抜けれる程の大きな体積と吸引力を持つものは大きな交通量の誘導力と制御力を持つことになる。

 もちろん、発見したゲートポイントで、このゲート化するにあたり、ゲートの質が良い程、得点も高く、好成績が狙える。僕らが今回通って来た木星へのゲートは比較的大きな部類のため、反応熱量も高く、発見が早かった。また宙域座標的にも地球から木星までのジャンプの利便性が高く、「あのゲート発見者は今頃どのような暮らしをしているのだろうか?」という疑問の言葉がハンターからも一般人からも出る程の大きく良質で良く利用されるゲートとなった。



 「一昨年シーが発見したポイント、今年工事着手になったろ? 」

「うん、そうみたいだね。先生から教えてもらったよ」

「発見されたポイントでウチの学生の中で有名なゲートって誰のだ? 」

「一番有名なポイントゲートは」思い出す途中で彼が質問してきた。

「ゼラはどうだ? 」

「ああゼラのも有名だよ、2年生の時に発見したやつが2つすぐ商業運用した」

「アマゾナイトの火星に跳ぶヤツは学園の授業運営にも使えるし、あれでかなり学園に設備予算が増えたので学園側はホクホクだった」

「グレイがこのコンテストで、ゼラに匹敵するゲートを発見できると思うか? 」

スックは僕の予想通りの質問をした。

「自分が発見したポイントが後の人気ゲートになるのは嬉しいし大人になったあともこの話題はついてまわる。でもそれだけだ。毎年参加して思うのはこれは、ほぼ運の作用も大きい。けどこの運を引き寄せるのは自分の中のモチベーションというか準備と実行と対応だ」

「ソうか? 」

「次への計画、想像、準備。想像」

「見えないものを見つける」


 「俺、見える」

「え?」

俺は息を飲んだ。思考が止まった。彼の顔を見た。

「俺、見えるぞ。シー」

「エー!」

「見えるとは?ポイント自体が見えるの?どのくらいの範囲で? 」

「俺は宙域をこの体で飛ぶんだ。見えるよ」

「あれ!見えるか?」とすぐそこにあるポイントを指した。

「見える。」と彼はそれがなんだ?という顔をした。

「僕が探査で航行中もこのウィンドシールドから? 」

 「見える」

「どのくらい? 」

「全部。俺はこの体でソトを飛べるんだ」

「全部とは? 」

「だから全部だ」

「じゃ、このポイントの近くには他になにがある? 」再びあのポイントを指しながら彼に聞いた。

「…何もない。ただ、あっちの方向にまた違うのが見えてくる」

「違うとは? 」

 「シー、お前が探しているのは別の場所に飛べるポイントだろ? 」

「そうだよ」

「俺は太陽風の電磁乱気流も見える」

「つまり? 」

俺を探査機代わりには使えない。

「見えると感じるということの違い? 」

 「両方だ」

「ポイントはどれも付近を飛んだら物体を吸引する力がある。それを感知して飛ばないとダメだからな」

「視覚的にはどれくらい見える?

お前の顔とさっきの子との顔の判別はつくよ」

「まあね。なんかソワソワしてたもんね」

「オい」

僕はスックに突っ込んだ。


 「今このモニターに出てるデータ画像のシルエットも見えてる? 」

「前にも思ったんだけど、俺飛んでる間はここまで凝視して宙域を飛んでいない。そこにポイントがある。引っ張られる感じもある。避ける。それだけだ」

「飛んでる間に視覚で認識した画像を脳で見れる? 」

「だから飛んでる間は危険を避けて通るだろ?停止してポイントを見ないし、本能で通り抜けるよ。ここまでのポイントの全体像を見て飛ばない」

 「…」

「ナんだ? 」

「………なーんで教えてくれないんだッ! 」

「ソれ言うと思ってた。フ」

「じゃッ。チョット、そこの先飛んで」僕は興奮して、船外前方を指した。

「ヤーだね。シミが出来る。それにルール違反だ」

 「船内からは分かる? 」

「…正直分からなくないけど、宙域飛んでるよりは感じない」席から浮いてウィンドシールドの前に行き宙域ソトを見た。

「えっ」僕はさらに興奮を覚えて彼を見上げた。

「ソんな期待してもダメだ。俺はこの船でお前と一緒にコンテストに参加しているがあくまでもお前のエントリーだ」


 「まあ、そうなんだけど、そのポイント感知能力があるなんて聞いたら驚くよ。このハントコンテストの要だろ? 」

僕は空を見上げながらなんで今まで僕に言わなかったのか?あんなにグレイに勝ちたがっていたのに。グレイのズルに敏感なのに自分の能力を使ってポイント得点を上げることは可能なくらい簡単に気づくだろう。

え?そんなに生身で宙域飛ぶのイヤ?


色んな憶測が頭を逡巡した。









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