第27話 救難要請
「よい航行を。気をつけて」
「はい。お世話になりました」
受付の男性との会話を終えて、動力充填や機体整備点検の料金を支払いは自動でして、料金の金額だけ確認をした。しめて2000コーシ。太陽系らしい共通通貨名で僕らの星でもお金として流通している。
『この度は我が給油所をご利用頂きまして、ありがとうございました。』という自動アナウンスとともに、グラジオスの雌しべのような形状のてっぺんからそのまま下へ下降してドッキングアームが僕らの機体を切り離した。僕らは列の最初の位置から外れて次の目的地のカニ座宙域方面を目指す。
先程から寡黙になっていたスックがなにをしているのかと横を見てみると、さっきの画像でこの機体デザインの似た船舶の内部構造を検索にかけていた、この機体は明らかにグレイの親の事業の特注品なのは一目瞭然だから、市場に出回っている彼のウチで開発した製品と比べて設計範囲が予測できるのだろう。外部から見えないようにするだけのスペースがあるか、あのフォルムの尾翼が怪しいと見ての確認だ。
「どうだった? 」と彼に声をかけると、
「まあ、間違いないね!左右に2つは取り付けてるな。合計3個だ」
「結果から言うと彼は言い逃れるよ。ゴール到着までに取り外して。検査受けて。監視カメラもごまかす」
「毎年のことだな」スックは続けた。
「デも見逃さないぜ。報告書は提出する」
「好きにするといいよ。みんなも途中で気づいて報告書だすだろうし。僕らにだけ睨まないよ」
「毎年同じ手は効かないというのは他の生徒も思ってるさ」
「肝心なのは僕らが優勝することだ」
「アあ、あいつのつむじを拝むのは俺だ」スックは鼻息荒く答えた。
「僕ら。だよ」と僕は前方に向き直り答えた。
「報告書はゴールまでに提出できるよ。それよりこれから1年計画してきたことが試せれるんだ。結果を出そう」
スックは答えなかったが、僕には彼がどう思っているかは良く分かった。コンテスト3年目、となりにいる宙域知的生命体はすっかり僕の相棒で、彼も学園のコンテスト参加者だ。
グラジオスの花びらが炎のように立ち上って時計回りに回転している。ピンクとブルー縞と帯の木星のガスもそれぞれ逆方向に回転しているこの光景を目にしながら、探査宙域へ向かうため船の舵を右に切り木星を左手に見ながら次のゲートまで進む。このコースは毎年のお決まりだ。そして毎年、軽い興奮度がある高揚感に包まれる。
「今年はウェーブ方式でも新しいやり方なんだろ? 」と彼が唐突に聞いてきた。
「小型探査機のウェーブと僕らのこの船を合わせて使うやり方を試したいんだ。これ他のみんなは意外に気づいてない方法だ」と秘密を打ち明けるみたいな気分で僕は答えた。
「通常無人小型探査機はゲートの入り口を発見した時に初めて飛ばして使うだろ?でもここらという範囲が最初から分かってて使う場合を想定してウェーブ2機での方法はまだ試してない」
「トいうと? 」
「去年の未申請のポイント(ゲート入り口)が往路中にある。去年たまたま時間がなくて全部探査出来なかったんだ。近しいエリアに2つあったポイントだ」
「ン。で? 」
僕は続けた。
「普通、探査する時、ここらというエリアを想定してから参加者の本船のウェーブ探知機を使用だろう? 」
「ルールブックにあったよ。グレイが毎年怪しいのもその1つが…」
「グレイはいいよ」僕は彼の言葉を遮ってさらに続けた。
「まずは、でも、そもそも、2機使うのは認めてないのは、探査する本船の搭載基数だ。そして発見後の無人探査機の使用は許可してる。それなら発見前に無人探査機を使用して、本船1機と無人探査機1機を同時に使うのは?これならルール違反じゃないし、もし突っ込まれても説明はできる」
「デ? 」
「ただ、それらしい、ポイントエリアの探索に使うのではやはり時間がかかる、2機使う良さは探査電波の性能の高さだ。古い方法だけど近赤外線とエックス線も同時に広範囲で使える」
「そしてここから」僕は間を置いて説明した。
「もともと2機を使えるポイントを準備しておいたら?すぐに探索方法や探索結果がどうポイント発見時とその周囲近辺で反応するか。2機建ての探索でのデータとその効果のデータが短時間で得られる」
「シかも船に2機搭載して使うのと、単体で1機づつ、別方向から同時に使うのとでは違うな」とスックの目が少し大きくなった。
「やみくもにここらというポイントで性能良くした参加者本船の探索と効果は違うと予想出来るんだ」
「ヤってみる価値あるな!グレイに差がつけれる! 」
僕は苦笑いをして
「まずは試して見なきゃ。で今、去年の未申請ポイントに向かってる」
ピーーーーーーーーーー。と小さな救難信号が鳴ったと思ったら。
「「もしーそこの小型機さ~ん!ちょっと助けてくださらなーい? 」」とダイレクトにすぐ船内に呼びかけてきた。
僕らはギョッとして顔を同時に上げ、あたりを見回し顔を見合わせた。
まず救難信号は周囲を飛んでる船体にシグナル音でアピールしてくるのが通例でこんな風に助けを求める言葉をすぐかけるものではないし、出来ないはずなのだ。これにも驚くし、なんか、女の子のような声であったのも驚いた。
「ナんだ? 」
「え? 」
ほぼ同時に声が出た。
「わっ! 」
「右舷2時だ」とスックがシグナルの方向だけ答えた。僕はシグナルの種類や救難信号の確認をするために慌ててモニターを見た。赤く点滅しているシグナルがあるが、本来の救難信号受信の点滅ではない。
こんな種類の点滅初めてみた。とりあえずこのボタンを押下してみた。
「こちらND2 387イスパ」
「やっと答えたー。良かったー。操縦不能、本機を回収されたし」
へんな文言をいう女の子がとりあえず救助要請らしき事を言ってるようだ。
「回収って…」と返事をするより先にスックが右舷2時の方向に船外カメラを合わせメインモニターにその船外の様子を写した。
「あ!コッチだよー! 」
カメラに気づくと呑気にこちらに手を振る女の子が映し出された。変わった乗り物にむき出しの体が見えた。バイクのような乗り物でそのバイクは良く見るとエアーポッド状態になってるのは救助までの酸素節約での事だろう。ポッドの周りが黒く霧が晴れてくるように救助目標体を見えるようになった。
「……。」
「「その船体に回収して下さい」」笑顔だった。
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