第23話  グラリオサ補給所

 混み混みのゲート進入行列を進み、やっと僕らのジャンプ審査になった。木星へのゲートに限っては自動審査でスムースジャンプが出来ないからゆえのこの行列。毎年毎度だけど僕のハントに木星は外せないので、この時間も毎年楽しむ事にしている。


 【貴船ID及び搭乗者、積載物の申告をお願いします。】と自動アナウンスが流れた。前持って用意していた機体情報のデータが入ってる右手薬指をタッチした。去年まではカードをスライドしていたが、今年からレンタル機体が新型になったのでこの申告方法になった。


 目の前の小さいデイスプレイにグリーンの光が一面に点灯し、僕らのデータの文字列になり表示された。

【ID及び申告内容確認。進入許可しました】とアナウンスが再び流れた。進入拒否はまずありえないんだけど、毎年、この木星進入時の審査は緊張する。


 「ナぜだろうな?なんか構えるよな? 」と白の君がこちらを見て言った。

「うん、絶対通れるハズって分かってるのにね」と僕。

【ゲートサークルの円の建造物が目前に見えて来たら必ず席にご着席下さり、ジャンプ中に立って移動されませんようにご注意下さい】と再び自動音声案内が船内に流れた。


 「この木星までのゲートサークルはうちの作品じゃないんだ」と目の前のサークル指さしながら彼に教えると、

「でもあの木星のグロリオサみたいな補給所、お前の学園が作った建造物だろ? 」

「そうだよ、去年も立ち寄った」

「あの建造物だけ、やたらと目立つよな、なんというかウチっぽいというか、太陽系ぽっくないとうか」

「それをいうなら太陽系のネオンをもした施設のほうが、よっぽど派手で目立ってるし、他の星系の施設もかなり独特でそれぞれが目立ってるよ」


 「ネオンか、太陽系を象徴した元素だな〈Ne〉」

「学園指定の施設以外には立ち寄れないけど、近くで観る分には楽しいよ。あそこは太陽系一のジャンクションだ」

「去年ウチの補給所によった時、僕らが学生だってあのエリアの小売りの業者がわかってるから、お土産を売りに来てたの覚えてる?あのネオンのキーホルダーが欲しいってハマヤが言ったたんだ。補給中に今年もやってくるかな? 」

「キーホルダー?なんのために? 」

「レトロで、太陽系ぽいのがいいんだよ」

「ソもそも鍵を使用しないだろ?指や顔や網膜認証だし、シートに座れば脈に呼気認識、脳波」

「僕らの星系では物質的鍵はないけど、それもまた…」

「イいんだろ?おまえら生徒は

「太陽系外の人類種はみんなカブレてるよ。滅多に降りることさえ出来ない故郷の惑星だ」

「イスパハンのおじさんが大きな鍵仕様の小型機を試作したんだ。用途は顧客の出先での修理用だけどクマデが嬉しそうに乘ってたよ」

「カギ、失くしたらどうするんだ? 」

「補助システムはあるよ」

「マあな」

「クマデがごつい鍵と上下のスティール製のスイッチを嬉しそうに説明してくれたよ。シートも牛革風なんだって」

「ヲまえ、乗りたいんだな」

「休み明けのクマデが自慢してる教室での風景が目に浮かぶよ。帰ったら、一番に僕も借りて乗りたい」

クマデは整備科2年の同級生だ。


 ジャンプ中僕らは地球産食材の陰と陽のカテゴリー訳の話題で盛り上がり、果ては僕らが他星系生命体の一部からみれば、全内蔵機能を保有したままの遅れた種族だとウワサされること、はたまた別の銀河系に行けば金持ちの生命体と認識されるから、他星系への行動範囲は限られる。その不自由さは年を追うごとに感じると学園卒業生の年若いおじさんに一度聞かされたことなんかを話し合った。

 ゲートの出口付近になるとメイン画面の横に、木星の現時点の太陽風情報や交通案内、木星製品広告なんかが写し出されると程なくジャンプアウトの準備のアナウンスが流れる。


 「そろそろだね。さあ出るぞ」

ゲートアウトした瞬間からあのピンクとブルーの大きなガスの星が薄いリングをまとい目の前に現れた。

この迫力!目のインパクト!地球と違う圧倒感に毎回小さく興奮する。

 目指すは我がグラリオサ補給所で真っ赤な花びらが反り上がってるあの建造物はピンクとブルーの木星カラーを背景にやたらと目立ち、可視運転でも迷わない。

「ハデだな。花そのものだ」と白の君がいまさらつぶやいた。

「ヲまえの学園、はたまた学園を支える付近の星系の成り立ちや工業や産業物が他星系にはかなりの異質で重宝がられてるかの象徴だな」

「みたいだね…」

 学園内で育つと普通に思っていた暮らしがそうではないと気づくのはこのコンテストに参加できる年回りからだった。授業で習う地球史や地球産物の映画というフィルム媒体なんかでは僕らは地球出身の他星系移住者の子孫。そのくくりで育つ。二百年後の僕らはたくましく生き、他の星系との貿易や星系協定や学園内の生徒や教師陣も授業の延長線上の産業物を生み出し、学園を支える経済力を算出した。すなわち発明品、デザイン、その製品化である。


 学園内の企画の製品だけでもかなりの経済力をなし、このグラリオサの補給所も今年卒業予定のデザイン科の生徒のものだ。

太陽系にやってきて自分たちの外洋船や建造物と太陽系や他星系の建造物の見た目の違いが大きい。明らかにちょっと異質で、ひと目で判断できるその外観は『洗練された、されてない』の違いといった感じというと早い。

 自星系産業物は、ゴテゴテした無骨でハデハデしい太陽系の建造物や船全般の外観と違い、簡単に言うとプレーンで洗練されたデザインが多い。イメージデザイン画をそのまま製品化できる技術力があるからだ。仕様もまた太陽系製のものと違い、扱いやすく管理しやすい。

 イスパハンの小型機専門のビジネスもの好循環好景気の波にのり、新型機の発表や店舗の改装、増築、試作品への投資等、僕らの年代からでは自星系経済の細かい背景までは把握出来ないまでも今はカヤナイト星系は好景気真っ只中だと理解できる。学園内設備拡充が続いてるのもその背景があるからだと分かる。産業資源の需要拡大のため、未開拓他星系を購入か、開拓星系を買収する計画もありそのニュースが星系内で流れると学園内でも生徒の親企業の参入がウワサされる。


 またそれを受けてかグレイティントの学園で傲慢な態度が今年あたりから嫌煙されている。

そのため学園への寄付金が増えた生徒に関しては待遇面で差が出てきてしまうことも懸念される。この審査は多少なりともあり、他生徒への影響などを考慮し外部審査が学園にあるシステムがある。このコンテストも同様である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る