第24話 白い猫 お土産売り

 「まだ朝時間でないから混んでるのかと思ったけど、そうでもないね。補給所にも数台しか並んでない」

「5台くらいだな。あれは観光用の小型機ばかりだ。お土産売りのロボットも2台くらい見える」

観光用機のキャビンアテンダントが押してるワゴンを模したキャリーケースに引き出しがありその中に売り物のお土産とスナックや旅の途中にあると嬉しい小物が揃っている。4つのコロコロの部分が推進力エンジンとなり、白い猫の売り子ロボットがそのワゴンを押しながら並ぶ小型機の間をうまくぶつからず操縦クルー達に品物を売っている。


 今日は白猫が2台いて数百年前の宇宙飛行士と呼ばれていた時代の大きなヘルメットをかぶった猫もいる。そっちの猫は大きなボードに地球土産のネオン文字のキーホルダーやサングラスや傘を模した小物をかけていて、船外カメラや宇宙風シールドガラスの前を器用に飛行して「買わな〜い? 」と動作でアピールしている。どちらの猫もなが~い白いしっぽがあり、どちらも推進力エンジンがついているワゴンや球体につながっている。


 「アの白いしっぽは絡まらないのか? 」

並ぶ小型機の周りを上手く飛行し針と糸のように見える。絡まらない糸と針。白い糸。

「上手く縮んだり伸びたりしてる!面白いね 」

列の最後尾あたりに近づくとお土産売りのロボットが少し遠くに見えるようになった。

「すぐに僕らの補給の番になるよ」

「イき先の太陽系天気予報と海賊情報と緊急時連絡スポット(マップ)の増設場所の最新版を手に入れる」とスックが言い放ち、最新版インフォーメーションのボタンを彼の伸びる触手ですばやくタッチした。

僕らのハント計画表でもあるこれから数日間のプラン表に反映した。1日目、2日目、とプラン表が目の前でスライドしていく、新しい情報が赤字で表記され、怪しい船の往来しているルートや太陽風の厳しい場所など、最新版に目を通した。


 頭上の航路の地図に僕らは見入っていると、

「ニャニャーン♪」

鳴き声とともにお土産を売りに先程の白猫が近づいてきた。

「ニャニャーン・お土産いかがですか?小腹空いてませんか? 」

別画面の点灯したシグナルボタンが表示され、これを押すと、販売しているお土産やスナック菓子などの画像が表示される。


 「ニャニャーン・期間限定デザイン商品が本日売れてますニャーン。ボタン押下して下さい。」

「ニャニャーン・どれも地球産人気商品取り揃えています。ご家族にまたご自身用にいかがですか?」

ワゴン型の白猫がワゴンを押しながらウィンドシールド前を通過した。


 「あ、お土産売りにきたね」

「例のネオンキーホルーダーの種類が見たいからボタン押して! 」

ボタンをスックが押し、僕らは補給待ちなのでメイン画面を透過スクリーンで2重画面にし、僕らの前の船舶を目視できるようにしつつ、お土産を選び始めた。

「新しいデザインなってるのかと思ったら、見本の字が違うからだ」

「これは僕にも読める、これも、いろんな言語で同じ意味のデザインだ! 」

ネオンの文字が数秒で3種類ほどの言語で代わり、色もオレンジ色赤色、青白色に変化する。

 自分のと、ハマヤに。

「クマデには買ってかないのか?」と横目で彼が聞いてきた。

「あっ!そうだね。帰って小型機借りるし。じゃこれ」

それぞれみんな違う言葉を選んだ。LOVE、THE AIR 、WIND

愛、大気、風。

「欲しいスナック菓子ある?日持ちするし、多めに買っていこう」

「ピュアラルっていうグミ菓子あるか?美味かった」

「ああ、あれ。どれ…んーーんーーー、あった!これ」

「去年みたのと、別のもある。新商品だ。これとこれとで5個ずつ」

「僕はプリングルスと…」

「プリングルスはいつも食ってるだろ? 」

「歌舞伎あげと餅揚げと」

「どちらもフライだ」

「ビエクル科だ」と僕はスックに答えた。

僕は買う商品を声を出して復唱した。

「よし、ピュアラルと歌舞揚げと餅揚げとネオンキーホルダー3個」

「ポチれ」

「これはポチると言わない。どこで覚えた? 」

僕は注文ボタンを押下した。

タッチパネル式になってる注文表に商品確定したら代金は自動精算になる。外洋での大きな買い物は出来ないし、コンテスト中のGPS記録の物理証拠にもなるからちょっと気を使う。変なものは買えない。

『ニャニャーン♪・ご注文ありがとうございました☆』

「商品搬入のため搬入ポッドロック解除をお願いしますニャーン」

座席横のポッドロック解除ボタンを押下した。ゴーンとお団子串のようなポッドが船底から排出された。船外カメラでも確認でき、白猫が自らの白いしっぽを伸ばし、ワゴンの引き出しから出した商品を器用にポッドの中に入れていく作業状況が映し出された。

 宇宙真空のインディゴブルー空間に真っ白い猫ロボットのコントラストが目に焼き付く上、猫の動作がコミカルで笑いを誘う。毎年の名物光景だ。


 「今年も買えたね」

「ダな! 」

「ニャニャーン搬入完了しました。商品確認をお願いします。返品交換は商品破損、不良品、個数間違いに限ります。交換エリアは本日中、木星エリアのみに限りますので。船舶補給までの間に確認するのをご推奨いたします。またのご利用お待ちしておりますニャーン」


 ポッド格納ボタン押下を手動で行い。スックは待ってましたとばかりに階下のフロアに商品を取りに行った。

バビューンと音がするのかと思うほどの瞬速で飛んで帰ってきた。白い手には商品が入った「元祖地球土産、白猫本舗」と地球公用語とニホン語漢字で両面書かれたボックスがあった。

「あ!プラスチック袋じゃないんだね」

「アあ。量があるからな。このボックス。部屋に飾ろうせ。俺のベッドにしてもいい」

「だめだよ。これはもっと授業で大事なものか、他に収納するものを考えるよ。僕たちのものだよ」僕は続けた、

「コンテストの評価表とか計画表とかメダルとかなんかそんなものを入れて一番目立つ所に飾ろうよ」

「ンーそうするか」

どってことないただの箱なのに、これが太陽系で買ってきたものなのだからぼくらはただの箱さえ嬉しい。太陽系の文字の箱。


 箱の中の購入商品を確認をして、それぞれのスナックをより分け、机の上に置き、念願のネオンキーホルダーを手にとって見る、大きさは15センチくらいストラップの紐の部分8センチくらいその先に蛍光管のシルバーソケットが小さくありネオンの文字につながっているこれはハマヤが欲しがってた、LOVEという文字だ。

 キーホルダーを手で振ったり、鍵に取り付けて左右に揺れてキーホルダー振動したら色が変わる。オレンジや白やピンク、想像したのより発光色が多かった。文字も数秒置きに3種類に変わる。こちらは想像通り、地球公用語の古典英語という文字とニホンの漢字という文字と古典英語をルーツにもつ僕らの言語だ。表記文字は違う色に点灯しながらその文字を彩った。

 「大きなグリップのゴツイ鍵にも合うよ。クマデも喜ぶ」

僕はクマデ用に買ったストラップを顔の高さに持ち上げ小さく揺らしてみた。点灯する風という文字に僕らは笑顔になった。

「コっちのもちゃんと光るぜ」白い手で持ち上げた3つ目のキーホルダーもちゃんと点灯した。

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