第5話 カフェテリア
授業内試験が終わり、昼休みになった。
僕らはいつも利用しているカフェテリア移動して。いつもなんとなく座っている席に僕、ピーコックブルー、ティーローズ、ブリックベージュとマスタードここにライトプラチナがたまに加わる。ペールイエローはクマデ達、整備科の生徒のテーブルでランチを良く取る。
「連れてきたぜ」とペールイエローがクマデとともに僕らのテーブルにやってきた。
「おっす。お呼び? 」とクマデが授業が2コマ続きで整備実習だったのかダスティピンクのつなぎのまま現れた。
クマデはハイカロリードリンクとデザートらしきものをテーブルへ置いた。「それだけ?」と聞くと昼前に軽食摂りながら授業を受けたそうだ。
「えっ?整備科って飲食オッケーなの? 」とみんなで驚くと
「えっ?ビエクル科ダメなの? 」とクマデから逆に質問を返された。
僕らの視線は一斉にペールイエローに集まった。どちらも授業内容を把握している彼は、
「整備科って以外と長時間の作業を要求されるんだ。ビエクル科とはまた違ったハードさがあって、体力も使う」
「ただ、ビエクル科と違って精密機器の側ばかりいないし、長時間乗り物の中で過ごさない。床に食べ物や飲みものを置いて作業する事も多いよ」と説明した。
「うらやましぃ」と僕らは合唱みたいに答えた。
「俺ら、昼前と夕方はみんな腹の虫が大合唱だよ」
みんなテーブル一体型になっている机上のメニュー表で各自ランチを注文しながらクマデの話しをきいた。
10時と15時くらいはおおっぴらに食べてもいいが、それ以外の時間帯は控えめに飲み物程度。たまにポケットに入る程度のおやつ。という暗黙のルールがあるそうだ。
トレイに各自のランチが乗っかった配膳車がやってきた。
「で?話ってこの事じゃないだろ? 」とみんなのランチが各自の前に並んだ頃を見計らってクマデが聞いてきた。
「ローザイスパハンブランド「グリシーヌ」の新しい機能について知りたいのよ」と上目使いに彼を見ながら自分のランチトレイを配膳車から受け取ったティーローズが口火を切った。
みんながうなずきながら彼を見た。
「どの機能?色々あるよ。航行中でも受け取れる貨物受け取り機能?停泊時球状ビュー機能?」
「そう!それ」と指さしてピーコックブルーが答えた。
「一応今回の改良はゲートハント専用でした事ではないんだ」
「1年に一度しか開催されないしね」と僕はクマデを見た。
「そう、あの機体は今後、主に観光用になるのを見越してなんだよ」
「どうりでねぇ」と納得したティーローズが言った。
「なぁ、カタログ映像的なの今ある?」
「あるよ」と個人端末のカタログページを出した。
ティーローズ以外は身を乗り出してページを覗いた。
「これだね」とクマデが指差し、そのページをタップした。通称グリシーヌという機体の内装の写真が30センチ上へせり上がった。一応新機種なのでおおっぴらに見せたくないのか、テーブル横を通る生徒達の目線を気にしながら映像サイズを手をかざして小さくなるように調節した。
機体内部にいる男性モデルが部屋にあるソファをリクライニングさせ横になると、
360度外宇宙の中にぽっかりソファに横たわっている男性の映像になった。
「これかぁ」
「なんか想像通りというか」
話している内に男性の頭上から頭を左右に動かして外を見渡しているイメージ映像的なものになっていった。
「ソファから降りたら元の機内の光景に変わるようになってるんだ」
「航行中は?」
「その仕様にしていない。停泊かアンカー停止時のみなんだ」
「コンテスト用にレンタルする生徒にはいいね。規則遵守にもなるし、気分転換で頭が切り替わりやすそう」
「うん僕も思ったよ 来年あたりからレンタル数増えるかもって」
クマデのこの発言に机上に置いてあった端末を自分が見やすい位置までずらしてティーローズが凝視し始めた。
「ライバル事業者同士だもんね」とマスタードはティーの様子を見て笑った。実際の話、ライバル会社の新機能なのでどちら側もナイーヴになる一件である場面なんだな。同じ学園内通う子息、子女の関係でも。
「この機能をお父さんに報告するの? 」とズバリ、ブリックがティーローズに聞いた。
「端末カタログがある時点で開発中ではないので、ウチももう情報を得てるわよ」
「そうだね。それを考えるとちょっと怖いな」とクマデは苦笑いした。
普段、二人の間に静かなる攻防があるのかないのか、ここは学園内でもっと気軽に自社製品について語るかと思っていたら案外そうでもない様子だ。
「ティーんとこの
僕は惑星タレソカレの特産品のぶどうのような紫ビアンコの実とペースト状になった食用ピカクシダのサラダを食べながら彼女の答えを待っていた。
顔を上げるとなにやら考え事をしながら彼女はストローでドリンクを飲んでいた。
「ティー? 」と声をかけると
「来年の仕様変更を考えてるんだろ」
ようやく口を開いた彼女は
「うーん。うちは推進力強化のことをメインに改良を進めていたからなぁ」と持ち上げていたカップをテーブルに置き
「正直、この新機能は人気でると思う」と
「うん、俺も思う」とブリックベージュは小さなスナック菓子袋を音を立てて開け、彼の好物であるタレソカレ名物、紫ひまわりのローストしたタネを食べ始めた。惑星オンブレの植物はほとんどが紫色をしている。唯一植物が育つエリアにある永遠の黄昏区域は、赤色矮星からの光は常に黄昏色なので光合成しやすい植物の色が紫色だからだ。
「なんでスナックのタネとキントーストと交互に食べるの?」とティーローズも同じ感想をもらす。
「この食べ方が好きなんだよ。このタネのプレーンな香ばしい味と濃厚な卵味トーストの無限ループ」
となりに座り横目でチラッと彼を見ながらペールイエローは
「シジミクラム入り飴色玉ねぎコンソメスープに山盛りスライスのパリジャン」
と自分の食べているメニューを唱えた。
スライスしたパリジャンをたまにスープに浸し口いっぱい満足そうに頬張る彼はそんな量で良く足りるよねと言いたそうだった。
「シジミクラムと玉ねぎの栄養価はいいとして他の栄養素はほぼだめね」陰陽食材にハマっているティーローズが言及した。
「陰陽の区別なんてなんて嗜好の前には何の意味もないよ。腹いっぱいフルエナジーで活動するに限るよ」もぐもぐしながらペールイエローは続けた。
「東洋食材マインドはぁ、若さの前では無意味」ピーコックブルーもペールイエローに賛成した
「グルマンに陰陽食材説はムリ」とマスタード。
「グルマンだからこそ陰陽をよく知り、より多くの良い食材を摂るのよ。食の嗜好性と天秤にかけちゃダメ」グラスを持ちながら人差し指を男衆に向け牽制した。
カフェテリアの2つの出入り口のうちの校舎側の第一入り口にシンシャ星系からの留学生が、僕らの席を探しながら入ってくるのが見えた。
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