第10話 模擬戦


 確か、ニーナとレオンがお互いをライバルと認め合った時、告げる言葉だったはず。

 

(それをなぜ俺に伝えるんだ?)


「俺の噂も納得はいかないけど、ニーナさんの噂は別が問題だから気にしなくていいと思うよ」

「……。そんな言葉を言うのなんてあなたぐらいよ」

「あはは。まあ、一応は王族だからね。噂は噂であって、真実ではない可能性があるのを信じるのはよくないからね」


 それに、ニーナが悪事を働いたわけではない。ストーリー状で結果的に嫌がらせをしたのは事実だけど、今起こっているわけではない。


 それなら、嫌がらせをしないように導けばいいだけのこと。


「私も分かったわ」

「ん?」

「あなたの噂は、信じるに値しないものだってことをね」

「ありがと」


 押しキャラにそう言ってもらえるのは、ものすごくうれしい。


 そこから、ニーナと軽く打ち解けてきて、雑談が盛り上がると、ジャック先生が言う。


「今からみんなの魔法を確かめます。一人ずつ俺の元へきて魔法を使ってみてください」


 クラスメイトが一人ずつジャック先生の元へ駆け寄っていき、最後の一人が俺になる。


「お願いします」

「はい。まずは目を瞑ってください」

「はい」


 言われるがまま目を瞑り、指示通りに魔素を取り込む。


「では片手に魔素をため込んで、水玉エラ・スゲルを唱えてください」


 ジャック先生の言われた通りに行うと、掌に小さな水玉エラ・スゲルが現れる。


(おぉ~。これが魔法か‼)


 俺自身が驚いていると、なぜかジャック先生も驚いた表情をしていた。


「ダイラルくん、水玉エラ・スゲルを使うのは初めてですよね?」

「はい」

「すごいですね。こんな完成度が高い水玉エラ・スゲルを使えるなんて」

「そ、そうなんですかね?」


 はっきり言って、完成度が高いなんて分からない。


 だから、俺は周りで水玉エラ・スゲルを使っている人を見てみると、俺ほど透き通ってはいなかった。


「はい。ですが、これで一旦は終わりです。ニーナさんのところへ戻ってください」

「わかりました」


 ニーナの元へ戻ると、ジャック先生同様に驚いた表情をしてこちらを見てくる。


「あなた、本当に魔法を使うのは初めてよね?」

「うん」

「魔力操作がすごいわね」

「そ、そうなのかな?」

「そうよ」


 実感はわかないが、ジャック先生とニーナに言われたのなら、そうなのかもしれない。


(ダイラルって、魔法の才能があったんだな)


 自分自身に関心をしていると、ジャック先生が俺たちに指をさしてくる。


「今から、魔力適性が高い人で模擬戦を行ってもらいます。レオンとニーナ、ダイラルとイリナ前に来てください」


(え、俺も?)


 驚きながらも、ニーナと前へ行くと、レオンたちと対面する。


「では、最初はレオンとニーナで戦ってください」

「「はい」」


 俺とイリナは隅に移動して二人の戦闘を観戦する。


(これだよこれ‼ ここから二人の仲が良くなるんだ‼)


 開始の合図と同時に、レオンがニーナに火玉ファイアーボールを放つが、風切エア・カッターで相殺する。


 その後も同じような攻防を繰り広げられるが、レオンの行った一手で均衡が崩れた。


 レオンは先ほどまでとは違い、火玉ファイアーボールの威力を下げて、数発連続でニーナに放った。


 ニーナは火玉ファイアーボールを相殺できず、体制を崩す。その一瞬を見逃さなかったレオンは、火玉ファイアーボールをニーナに放った。


「‼」


(あれが当たったら、ニーナは‼)


 俺が立ち上がった時、ニーナの目の前で火玉ファイアーボールがかき消された。


「お二人とも、お疲れ様です。素晴らしかったです」

「「ありがとうございました」」


(え、何が起こったんだ?)


 俺は隣に座っているイリナに尋ねる。


「なぁ、今何が起きたんだ?」

「模擬戦だから、重症になりそうな魔法が当たりそうになったら、かき消される魔法陣が唱えられているはずだよ」

「あ~、そういうことか」


 まあ、普通に考えて見たら、そうだよな。学生をこんなところで重症にするわけにもいかないし。


 そう思っていると、レオンとニーナが握手をしていた。


「なかなか強いな」

「それはこっちのセリフよ。次こそ倒すわ」

「次も負けないけどな‼」


 二人は笑みを浮かべていた。


(いいぞ、いい雰囲気だ‼)


 よかった。ストーリーが変わっているわけではない。これなら、ニーナとレオンをくっつけることが出来る。


 そう確信していると、イリナが訪ねてくる。


「ダイラル、ニーナさんのことが気になるの?」

「ん、なんで?」

「何でもない……」

「そ、そう」


 ニーナとレオンが俺たちの元へ戻ってくると、ジャック先生が俺たちを呼んだため、前にでる。


「では、次はダイラルとイリナの模擬戦を始めます」


 俺はイリナと握手をする。


「負けないよ」

「それはこっちのセリフよ」


「では、はじめ‼」


 ジャック先生の合図と同時に、イリナは火玉ファイアーボールを俺に放ってきた。



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