第9話 悪役令嬢


 ニーナが目の前に立っているということもあり、呆然としてしまった。


(あ~、可愛い)


 さっきまでは遠目から見ているだけであった。はっきり言って、それだけでも満足できた。でも、こんな近くにいると、思っている以上に美少女であった。


 一言で表すなら金髪碧眼美少女。それに加えて、スタイルがよいというおまけつきだ。こんなキャラを誰が嫌いになるのだろうか。


 ニーナのことを凝視していると、睨まれてしまう。


「何?」

「ご、ごめん」

「そう。私、あなたのこと認めてないから」

「あ、うん」


(そうそう‼ このツンツン感がいいんだよなぁ~)


 別に認められなくていい。このツンデレ感をもっと見たい。


(あれ、そういえば、イリナも最初はツンデレキャラとかじゃなかったっけ?)


 俺の記憶では、ツンデレキャラとしてニーナと被っていた印象を持っている。だけど、ここ最近話している限りでは、ツンデレキャラとはあまり思えなかった。


(まあいいか……。今はニーナだ‼)


「それで、あなたはなんの魔法が使えるの?」

「それが何も使えないんだよね」

「え⁉」


 イリナは驚いた表情でこちらを見てくる。


「魔法を使ったことが無いって言った方がいいかな」

「そう。なら今日使えるようになるってことなのね」

「まあ、そうだね」


 ストーリー状でダイラルは水魔法を得意とするキャラではあった。でも、今はダイラルであってダイラルではない。だから、魔法が使えるのか不安であった。


 不安を抱えている中、ジャック先生が授業を始めた。


「皆さん、今から魔法の基礎を教えます。知っている人も多いかとは思いますが、しっかりと聞いてくださいね」


 そして、ジャック先生は淡々と魔法のことを話し始めた。


 魔法とは、火・水・土・風で構成されており、ごく稀に光と闇を使うことが出来る。

 光魔法は聖女など一部の人物のみが使える魔法であり、闇魔法は暗殺者や魔族などが使うことが多い。


 そして魔法を使うには、空気中にある魔素を体内に取り込んで、使うことが出来るとのこと。


「じゃあ、みんなの適正属性を見ますよ。ちなみに私は火です」


 言われるがまま、一人ずつジャック先生のところへ行き、魔法適正を見る。


 最初に俺がジャック先生の元へ行き魔法適正を見る。


【水】


 案の定、ストーリー状と同じ結果が出ていた。


 その後、俺に続くようにニーナやレオン、イリナたちが続いていった。


 ニーナは風、レオンとイリナは火であった。


「それでは、皆さんの適正魔法も分かったことですので、外へ行って実践してみましょう」



 外へ行くと、まずはジャック先生が実践してみてくれる。


 目の前に火の竜巻が起こる。


(すごい、すごい‼)


 目の前で上級魔法を見て、心が躍った。


 逆にこんな魔法を使われて心が躍らない奴なんていない。なんせ、前世では魔法という概念がなかったのだから。


(早く魔法が使いたいな‼)


 目を輝かせていると、ニーナに言われる。


「あなた、本当に魔法を使ったことがないのね」

「え、そうだよ‼」


 なぜかニーナはため息をつかれる。


「緊張した意味がなかったわ」


 その言葉に首を傾げる。


(なんで緊張するんだ?)


「もっとあなたは気難しい人だと思っていたわ」

「なんで?」

「あなた、なんて言われているかわかる?」

「分からない……」


(逆になんて言われているの⁉)


「悪役王子って呼ばれているわ」

「な、なんで……?」

「イリナ様を陥れようとした人物って言われているからよ」

「は?」


 なんで俺がイリナを陥れなければいけないんだ。それこそ意味が分からなかった。すると、ニーナは少し下を俯きながら言う。


「そして、私も同じ悪役。悪役令嬢なのよ……」


(あれ、これってレオンと仲良くなるために言う言葉じゃなかったか?)

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