第7話 恩人との出会い
目の前にいる人が女性だということはわかるが、靄がかかってしまい、目視することはできなかった。
「えっと、どちら様ですか?」
「あはは~。こうすれば分かるかな?」
その言葉と同時に、ただならぬ魔力を放ってきた。
(⁉)
この感覚に身に覚えがある。でも、思い出すことが出来ない。
(どこで知ったんだ?)
この魔力を忘れるわけがない。だが、思い出せない……。その時、ハッとした。
(‼)
いや、思い出せないんじゃない。覚えていないんだ。体では覚えているけど、記憶としては残っていない。
そんな人物、一人しかいない。
「ダンジョンで助けていただいた方ですか?」
「よくわかったね‼」
声のトーンから驚いていることが分かった。
俺はすぐさま、ベットから起き上がり、頭を下げる。
「あの時は助けて頂いてありがとうございました」
「良いよ」
「できれば、何かお礼をさせて頂きたいのですが……」
出来れば、恩返しをしたい。命の恩人である人にお礼をしたいと思うのは当然のことだろう。
「別にいいよ。そんなのを求めていたわけじゃないし」
「でも……」
すると、次の言葉を発するまで間が生まれる。
「まあ合格ラインかな?」
「え?」
「ううん。こっちの話」
俺は首を傾げる。
(何が合格ラインなんだろう?)
「一つだけ聞いても良いかな?」
「はい」
「ダイラルくんは、魔法をどう思っている?」
「夢ですかね?」
俺の言葉に女性は体を傾けた。
「俺、魔法を使ったことが無いんです。でも、魔法って医療や錬金・戦術など様々な未来があると思うんです」
そう。魔法とは今できないことを可能にする夢が詰まっていると思っている。まあ、この考えは転生した俺だからなのかもしれないけど。
「いいね。私もそう思っている」
「ですよね」
「うん。じゃあ、また会いに来るよ」
「え?」
「それまでに魔法を使えるようになっていてね。その時にお礼をしてもらうよ」
そう言って、目の前にいる女性はこの場から消え去って行った。
(誰だったんだろう?)
ただならぬ存在であることはわかる。だけど、それしか分からなかった。
「まあ今考えてもしょうがないか」
俺はベットの中で目を瞑り、眠りについた。
そこから、毎日のようにイリナが面会に来て、あっという間に退院日になった。
(これで、明日から学院に通えるのか)
そう思えたら、ワクワクが止まらなかった。
(早くニーナたちと会って、レオンとくっつけたいな)
そして、退院後初めての教室へ入った瞬間、クラスメイト全員の視線が俺に集まっていた。
(え、何かした?)
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