第6話 帰還


 目を覚ますと見たことの無い天井をしていた。


「ここは?」


 あたりを見回すと、そこにはイリナが眠っていた。その瞬間、胸を撫で下ろす。


(あの時の推理は当たっていたのか……)


 ダンジョンにいる時、ずっと考えていた。どうやったら転移水晶が発動するのか。


 二階層では発動しなかったが、最初にイリナと一緒に戦っていた人たちは一階層で発動していた。


 つまり、何かしらのトリガーがあると言う事。


 そこで、一つの仮説を出した。


・一階層のみで使用すること。

・転移水晶が壊れた時、一番近い存在が転移される。


 この二つの条件を置いてみたら、辻褄があった。


 だが、確証を持つことが出来なかった。だからこそ、今イリナを見て安堵してしまった。


「あの時の行動は正しかった」


 ベットから起き上がろうとした時、体中から激痛が走る。


(ッ∼∼∼⁉⁉)


 腹を抱えながらうずくまっていると、寝ていたイリナが目を覚ます。


「ダイラル‼」


 そう言いながら、抱き着いてきた。 


(痛い、痛いから……)


「無事でよかったよ」

「それはこっちのセリフ‼」

「あ、あはは……」


 頭を掻きながらそう言うが、イリナは何も返答してこなかった。


(お、怒らせちゃったかな?)


 俺は恐る恐るイリナのことを見ると、涙を流していた。


「本当に無事でよかった……」

「うん。俺もそう思ってる」


 実際、生きた心地がしていない。


 そこから、数分程が経って、やっと俺から離れてくれたイリナが話し始める。


「あの状況から、どうやって帰ってきたの?」

「それが、俺も分からないんだよね。誰かに助けてもらったのは分かるんだけど……。イリナは知らない?」

「ジャック先生も教えてくれなかったんだ……」

「そ、そうなんだ」


(なんで、教えてくれないんだろう?)


 あの場にいたイリナには聞く権利があると思う。


「まあ、お互い無事でよかったよ」

「うん」

「それよりも、イリナの傷は大丈夫なの?」

「私はすぐに治るって言われてるから大丈夫」


 それを聞いて、安堵する。


「俺も治ったら学院に通うから、その時になったらよろしくね」

「うん‼」


 すると、部屋に医者が入ってきたため、イリナはこの場を後にした。


 医者から言われた診断結果からすれば、数カ所の骨折、肉体損傷で済んでいた。あの状況からしたら、奇跡に近いとのこと。


(本当によかった)


 魔法が発展しているということもあり、二週間もすれば治るらしい。


 その後、学院の教師人から謝罪を受けた。


(あんなの予知できないんだから、しょうがないよ)


 そう思ってはいたが、謝罪は受け入れた。そうでなければ、教師たちは罪悪感で押しつぶされてしまうかもしれないから。


 その後、日が暮れ始めたため、就寝の準備をする。


「早く治したいしな」


 一刻も早く治して、ニーナとレオンをくっつけさせたい。それに、イリナを含めたヒロインたちとレオンのやり取りも見たい‼


 そう思ったら、すぐに治したくてしょうが無かった。


 そのため、俺はすぐさま就寝をした。


 夜中、うっすらと声が聞こえてくる。


「ダ…」

「⁇」


 誰かの声が聞こえて目を覚ますと、そこにはただならぬ魔力を持った女性が立っていた。


「無事でよかったよ」

「え?」

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