第3話 雑草茶
「ほら、雑草に見えるでしょ」
「見えるというか、雑草ですよね」
「うん。でもほら、丁度そのラバエル草やエカルバ草はお茶にできるんだよ」
「お茶ですか」
「うん。そうだ、天日干しに使えるザルをあげよう」
【天日干し用のザル】
『なんでも乾燥させることがができる。夜間でも使用可能』
天日用なのに夜間とは。考えても仕方がないが、便利なので受け取る。
「ほら、さっきのラバエル草を広げて乾燥させてみよう」
「うん」
ザルにラバエル草を実体化させて、並べる。
ちょっと見てるうちに乾いてきて、カラカラになった。
「おおぉぉ、これがお茶」
「そうだね。それが雑草茶」
「雑草茶なのか、ラバエル茶じゃなくて」
「うん。近縁種でみんなまとめて雑草茶って呼んでるね」
つまり草の種類だけお茶があるとアイテムスロットを消費して邪魔なので、一緒になっているっていうメタ視点的利点があるのね。
【雑草茶】
『雑草から作った茶葉。お湯で淹れる』
「おおおぉ、雑草茶ね」
「淹れてあげようか?」
「お願いします」
そういうとお姉さんは魔道ポットだというものと急須とカップを用意してくれた。
「ほら、急須に茶葉を入れて、お湯を注ぐと」
「おぉぉ、なんだかいい匂い」
色は薄い感じだけど独特と草の風味がほどよいくて、美味しそうだ。
「どれどれ」
ごくりと飲んでみる。まぁまぁかな、美味しい。
それほど癖もないし、青臭くもない。
「飲みやすいです」
「よかったわね」
【雑草ティー】
『雑草茶のお茶。SP30回復』
このゲームにはHPとMP以外に、SPという体力ポイントがある。
要するに少し疲労回復効果があるらしい。
「○○茶」が茶葉で「○○ティー」が入れたお茶なのかな。むふぅ。
もともとSPもHPも減っていなかったので、特に効果は分からなかった。
「ちょっと走ってみる」
「どうぞ、どうぞ」
その辺を走ると、自分の視界の下のほうに黄色いSPゲージが表示された。
100/100から減って95/100、90/100とどんどん下がる。
一秒に1くらい減ることが分かった。
「はぁはぁはぁ、疲れた」
「うふふ、もう一杯いかが?」
「ちょうだい」
ごくごく。
「おいち」
お茶美味しい。SPゲージがみるみる回復していき、疲労感も薄れたような気がする。
フルダイブすげぇ。
こういうところも再現出来てるんだな。
「こりゃいいわ」
「どうしたの?」
「雑草茶、いっぱい作る!」
「うふふ、この辺の道端の雑草はみんな採っていいわよ」
「やった」
ということで採って歩く。
ストレージにみるみる雑草のラバエル草とエカルバ草のストックが溜まっていく。
もちろん草の特徴を見て、他の草は避けて歩く。
あ、あれ?
【ラバタリス薬草】
『初級の薬草。ポーションの材料となる』
ラバエル草だと思った中に、薬草が混ざっていたみたいだった。
「お姉さん、これ」
「あ、うん。ラバタリス薬草だね。たまに一緒になって生えてることがあるわ」
「へぇ」
「これもお茶にできるけど、数を集めたらポーションにするといいわよ」
「ポーション」
心ときめく魅惑の響き。ポーション。
やっぱ錬金術もやってみたいよな。
それも画面ポンポンポン、ではなくて体験型ともなれば、一度はやはりやってみたい。
「干さなきゃ」
「一度にたくさんできたのよね」
「うん。ザルいっぱいあればできますかね」
「そうね。出来ると思うわよ。でも私はもう予備は持っていないわ」
「またどこかで買ってきます」
「お金持ってる? お茶を売ればいいわ」
「そうします」
そっか、もっとお金を稼がなきゃならないんだ。
水汲みよりもっと儲かるバイトを探すか。
それとも冒険者として活動するかだよな。
ほとんどのプレイヤーは冒険者をしている。
商人だと名乗って、魔物退治をしないプレイヤーもいるようだけど、少数派みたいだった。
それはそれで面白そうだけど、俺は標準的なプレイをしようかな。
「いひひ、お茶ができたぞ」
ストレージにはたくさん採って乾燥させた雑草茶が溜まっていた。
「雑貨屋さんはと、こっちだこっち」
地図にちゃんとポマル雑貨屋と書かれている。
「すみません。雑貨屋さん」
「なんでしょうか?」
「あの、雑草茶って買取してますか?」
「はいよぉ。一個5ゴールドだね」
「5ゴールドですか……」
まあもとは道端の草だしな。
わかった。おっちゃんを信じよう。売ってみる。
「全部で300ゴールドですね」
「はい」
「毎度ありがとうございます」
「ありがとう、おっちゃん」
こうして、雑草茶を販売することができた。
次は宿屋を探そう。
もう夕方で空が茜色に染まっていた。
俺はゲーム内で生活していてログアウトできないので、宿屋で寝ることになる。
他のプレイヤーはもうログアウトしたのかだいぶ人数が少なくなっている。
俺もログアウトできるんだけど、そうすると集中治療室で身動きもなにもできない苦しい状態を味わうことになる。
「よし、宿に泊まろう」
町の低級の宿屋を選んで、そこで宿泊することにした。
マップを頼りに移動をするのだった。
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