第53話 同窓会に元カノが来るらしい。





翌日、起きだしてみると、時刻はもう昼前であった。

昨日はいつ寝たのやら覚えていない。

が、スマホの履歴を見てみれば、いつのまにか電話は四時半ごろに終了していたから、青葉の方から切ったのかもしれない。


もしくは、単なる無意識だろうか。


いずれにしても、そんなことより気にするべきは、現在の時刻のほうだ。


昼開催だから、さすがに起きられるだろうとアラームもかけずに寝たのが悪かった。

すでに時刻は、今すぐ用意を始めても、ぎりぎり間に合うかどうかの時間だ。


俺は、慌てて支度にとりかかる。

服は高校時代に着ていたものをクローゼットから引っ張り出して、顔を洗って、適当に髪を整えたら家を出た。


「出かけるの? 気を付けてね」


見送ってくれた母の顔は、驚くほどにこやかだった。

たぶん、息子が少しは立ち直ったと喜んでいるのだろう。


まぁそれは大きな勘違いなのだが、今さら否定してもしょうがない。


小走りで向かう場所は、駅からは少し距離があるが幹線道路沿いのレストランだ。

そこでバイトをしている同級生がいるらしく、その伝手で昼営業の時間だけ貸し切りにできたらしい。


店の場所は知っていたから、迷うこと進む。

途中、時間を確認してみれば本当にぎりぎりだ。


友人たちからもなにやらメッセージが来ている。

てっきり、来るのかどうかを確認する内容だと思ったのだが、


『梅野さん来てるぞ、おい』


そこに書いていた内容は、予想していなかったものだ。

「欠席」としていたはずの明日香が来ているのだと言う。



……なんとなく、不穏な香りが漂ってきた。

が、ここまで来ておいて、今さら帰るわけにもいかない。


それに、別に俺にはなんのやましいこともないのだ。

あるとすれば、それは明日香のほうだ。


そう考えた俺は、そのまま会場へと足を向けた。


店の前にたどり着く。

店内からはすでに賑やかしい声が漏れ聞こえていたから、もう大多数が集まっているのだろう。


そして、この中には明日香もいる。

もう顔を見たくない気持ちもあったが、別にあいつに会いに来たわけじゃない。ただ友達に会いに来ただけだ。


そう割り切って扉を開けると、そこには女子四人組が待ち受けていた。


主に、運動部でつるんでいた奴らだ。一応、話したことはあるが、決して仲がいいとは言えない連中である。

受付でもしているのだろうか。


「遅れて悪い」


と言うが、反応はない。

ただただ、俺に目をすがめてくる。なかなかの迫力にたじろいでいたら、


「うわ、ほんとに来たよ、クズ男。今すぐ帰ってもらっていい?」


繰り出されたのは、殺傷力たっぷりのこの一言であった。


…………は?



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