第23話 美少女ちゃんの家に初訪問します。
侵入者は、ただのGだった、以上解散。
それで終わりになると思っていたのだが、結局俺は青葉の家へと足を向けていた。
改めて住所を教えて貰い、マップアプリを頼りに、彼女の家を目指す。
もう焦る意味はないため、ゆっくりと向かっていたのだけれど、そのアパートは思いのほか近かった。
途中コンビニに寄ったのを入れても、十分程度でアパートの玄関口にたどり着く。
はじめてここに来た時は、わざわざ上野駅に戻って最寄り駅まで電車に乗ったが、あれは道を知らなかったせいだったらしい。
そんな発見に一人驚きつつ、彼女の部屋がある3階まで上がる。
「あ、野上くん!」
すると、青葉はそこにいた。
玄関扉の前、しゃがみ込んで膝を丸めていた姿勢から、勢い立ちあがる。
彼女は、水玉模様の寝間着姿だった。
どうやら化粧もしておらず、髪も止めていない。完全な自然体であったが、その美貌はそれくらいで褪せたりしないらしい。
ただ少し方向性は変わっている。
ゲームで言えば、経験値を振る項目を変えて、バランス型から守備型に変化したとでも言おうか。
すっぴん姿は、いつもよりあどけなく可愛らしい印象だ。
少なくとも、アパートの廊下に一人座り込んでいるには似つかない。
「なにしてるんだよ、こんなところで」
「野上くんを待ってたんだよ。迎えに来なくていいって言うけど、家にいたくないし」
「深夜に不用意に出歩く方が危ないからな。不審者がいるかもしれない」
「でも、うちの中にはアイツがいるよ。不審者より怖いよ?」
青葉は両肩を抱え、身を震わせる。
「思い出すだけでだめだ。ぞわぞわする~」
さらには玄関扉から、後ろへとじりじり遠ざかっていく始末。さらには髪をかき乱して頭を振る。
こりゃ、言うまでもなく重症だ。
俺はため息をつきつつ、レジ袋からコンビニで買ってきた対策グッズたちを青葉に見せる。
「とりあえずいくつか買ってきたけど、どれにする? 直接噴射するスプレー、家の中に撒くスプレー、あとは捕まえる罠だけど」
「そのなかで、確実にやれるやつは? 絶対に逃さず。確実に仕留められる奴は?」
「言い回しが怖いな、おい。家の中に撒くスプレーかな。でもこれを撒くとしばらく家に入れないけど」
「もうなんでもいいよ、倒せるなら! 倒さないと入れないし」
こんなやりとりで、G退治の方法はあっさりと決まった。
だが、家の中に入って散布しなければならない以上、今の青葉にはできまい。
「鍵開いてるんだよな、青葉さん」
「え、うん。一応、ずっと家の前にいたしね」
「じゃあ俺がやるよ。大したことじゃないし。入っていいか?」
「えっ……! えっと、その待って。ちょっと考える」
青葉は口元で、なにやらごにょごにょつぶやき始める。
「下着は浴室に干してるし、脱いだ靴下は放りっぱなしだけど……」
余計な情報が入ってきたが、聞かなかったことにした。
「背に腹は代えられない……! ど、どうぞ。変なもの見ないでね!?」
「ま、善処するよ」
こうして許可を得た俺は、青葉の家の扉を開けた。実質はじめてとなる女子の家だ。
元カノ・明日香の家には、引っ越しの手伝いをするために上がったことはあるが、そのときはまだなにも置かれていない状態だった。
実際に生活している部屋に入るとなると、少しは緊張する。
……それがまさかこんな形になろうとは思いもしなかったけれど。
俺は靴を脱ぎ部屋へ上がると、まずキッチン兼廊下を渡る。
そこには彼女がさっき言っていたように、脱ぎたてらしい靴下が二足ほど転がっていた。しかも、浴室へ続く扉も開いてるし、色々と生々しい。
これぞ生活感のにじみ出る部屋という感じだ。
あの天使みたいな少女が住んでいる場所には思えない。
一瞬、「下着が干してある」という言葉がよぎるが、見たい気持ちを抑えるくらいの理性は持ち合わせていた。
俺はできるだけ目を瞑りながら、そろりとリビングへと入った。
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