理不尽に彼女に振られ心を折られた俺、元同級生でクラスのアイドルだった美少女をヤリサーから助けたら、灰色だった大学生活が輝きだした件
第6話 今後関わり合いになることはない……はずだったのにすぐに再会した件
第6話 今後関わり合いになることはない……はずだったのにすぐに再会した件
次の日、俺の寝起きはおよそ最悪であった。
アラームにたたき起こされ、悪夢から覚めて、どうにかベッドを這い出るのがやっとなくらい。
そのわけはもちろん、明日香に振られた一件だ。
振られてすぐに切り替えられるほど、俺は強くない。むしろ打たれ弱い自覚もある。
けれど、
「……学校いかねぇと」
一応こう思えるくらいには回復していた。
それはたぶん、昨夜、青葉ひかりから貰った言葉のおかげだ。
もう一度会うことがあったなら、礼を述べなければなるまい。
まぁもっとも、俺と青葉はいわば陰と陽。
連絡先も交換していないから、今後関わり合いになることもないだろうが。
俺は昨夜の一件を思い返し、少し生気を取り戻すとともにため息をつく。
それから準備を済ませて、この家で唯一まともな食料と呼べる100円で5本入りの安いスティックパンを口に詰めたら家を出た。
今日から一週間、大学では履修登録を行う期間だ。
大学生になれば、受ける授業も自分たちで決めなければならない。
そこで同級生たちと相談しながら、授業やサークルを決めていくのが、桂堂大では王道だそうだ。
少なくともウェブで調べた限り、そう書いてあった。
けれど当然ながら、俺に友達はいない。
なぜなら昨日のオリエンテーションにも懇親会にも顔を出さなかったことにより、文学部には一人の知り合いもいないからだ。
「……いきなりハードモードすぎだろ。RPGの二周目かよ」
学校構内、東寄りにある文学部棟までやってきて、俺は思わず小さく呟く。
そこでは社会科の新入生らしき集団が、男女に別れつつも、すでにいくつかのグループを形成していた。しかも、なんだかもう仲良さげときている。
声をかけるのは気が引けたのだがら誰かに話を聞かないことには今の俺にはなんの情報もない。
俺は、どうにか混じれないかと一つの集団に近づいていく。
するとどうだ、彼らは小さく声を顰めるではないか。
これは、話しかけられる雰囲気じゃない。
俺はそのまま何事もなかったふりで、彼らの横手を通り過ぎる。
……なに? もしかして俺、隠しきれない負のオーラ出てる?
いやたしかに、昨日もよく眠れなかったからクマはひどいかもしれないけど。
俺が扉の前で一人唸っていると、後ろから何者かに肩を叩かれた。
「す、すいません!」
進路を塞いでしまっていたのかもしれない。
俺は邪魔だったかと飛び退き、うしろを振り向く。
「もう来てたの? 早いじゃん」
するとそこには、青葉ひかりがいた。
今日も今日とて、彼女は輝いている。
黒地に星の散りばめられた膝上丈のワンピースで大胆に脚を見せ、足元はベージュの厚底ブーツ。
しかもそれが、ハーフアップの髪を留めているリボンと同じ色で、なんとなく統一感もある。
俺は思わず一瞬見惚れて、それからはっとする。
「なにやってんだ、青葉さん」
「ひどいな、同級生に向かって。なにって履修決めにきたんだよ。野上くんもでしょ?」
「は? なに、青葉さんも文学部なの?」
「そ。そんで、シャガク。一緒だよ」
「……嘘だろ」
「ほんとほんと。昨日のオリテの出欠で、野上くんの名前呼ばれてたし、私は同じ学科って知ってたよ。って、あれ、この話しなかった?」
俺はぶんぶんと首を横に振る。
「そんな話してねぇよ、ひとつも。というか、あの後すぐ眠いって言って、ろくに会話してないし」
そう、あれから青葉は急な眠気に襲われたらしく、公園でしっかり3時間も寝てくれたのだ。
しかも、もはや熟睡の域に達しており、気持ち良さげに目を瞑って寝息を立てていた。
その間、俺は寝るわけにもいかず、彼女が起きるのをただ空を見上げて待つ。
挙句には、彼女を家まで送ることとなった。
夜の上野は、かなりの歓楽街である。
酔って判断力の落ちている彼女を一人で歩かせるには、さすがに躊躇われた。
その後、俺は彷徨いながら上野駅まで戻り、どうにか帰り着く。
家についたのは、深夜1時すぎだ。
今俺の身体が重いのは、振られたことだけではなく、それも理由の一つである。
単純な身体の疲れがまだ抜けていなかった。
「あー、そうだっけ……。とにかく昨日はありがとうね。おかげで、ばっちり元気になったよ!」
まぁ、それでも、歯を剥きながら笑ってこう言われると悪い気がしないから不思議だ。
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