第18話 ダンジョンでの冒険!

 俺達はマサアキさんをパーティの先頭、斥候とし中段にナナコさんとアヤ、俺は最後尾で警戒しながらダンジョンを進む。

 ダンジョン内は大体七メートル上下左右四方くらい、薄暗く光る謎組成の石で造られた通路がずっと続く。

 暗視効果があるイルミネーターのおかげで、ライトを使う必要はほぼ無い。


 ……このくらいの道幅が基本らしいから、ダンジョン内での同時戦闘は歩兵分隊プラトゥーン、八人程度が限界と言われているんだとか。なお、教官は、俺の更に背後で警戒してはくれているけどね。


 授業で教えてもらった話では、ダンジョン・コアが地面に触れた瞬間からマナの急上昇と共にダンジョン化が進み、一定以上のマナ濃度になれば、そこは地下へと落ち込みダンジョンへと変貌する。

 この繰り返しで、どんどんダンジョンは深く広くなっていく。


 ……この間の氾濫も放置していたら、またダンジョンに飲み込まれる土地が増えていた訳か。今までは、コアを人間が回収して封印していたり、コアのエネルギー切れで消滅していたらしいだけど。


「右角向こう、敵数3。小型種。接敵まで三秒」

「射撃準備OK。見えました。わたし、撃ちます!」


 気配感知に優れているマサアキさんが、イルミネーターの情報も加えて接敵前に教えてくれる。

 後はナナコさんが機関銃で指切りバースト射撃をすれば、俺たちの前に現れた小鬼ゴブリンはあっという間にハチの巣となり、マナの塵と化す。

 そして石つくりの床に紫色の小石、魔石が転がった。


「おにーちゃん、わたしが魔石を拾う係をするね」


 アヤが楽しそうに、茶巾袋の中に魔石を入れている。

 戦闘ではほとんど出番がないアヤにとって、仕事があるのが楽しいらしい。


「次、前方。敵は……一体。中型。突撃してくる! 接敵まで二秒!」


「俺が行きます! ノウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ! 雷撃波!」


 イルミネーターのマップで光点だった敵が視界に入る。

 前から来た斧を持つ太った人型モンスター。

 それは、俺の雷撃で黒焦げになって無散した。


「ハルおにーちゃん、凄いの!」

「だよね、アヤちゃん。オーク豚鬼種を一撃だもん」


 基本、ナナコさんやマサアキさんの銃撃で敵を撃破。

 中型以上な奴は皆が足止めをしている間に、俺が魔法で支援攻撃をするパターンで俺たちはダンジョン内を進んでいった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「アヤ、大丈夫?」

「うん、平気だよ。ハルおにーちゃん」


 俺たちパーティは順調にダンジョン内を通過。

 今は第三層に向かうフロアーにて休憩中だ。


「今のところ、チェックポイントを全部通過。残弾数も問題無いし、誰も怪我無し。このまま無事に行けたら良いね、みんな」


「そこは、ナナコおねーさんがいるからなのよ? 敵からアヤちゃんを守って銃撃で一掃なんだから。えっへん!」


 アヤは元気そう。

 ゴブリン達を怖がるのかと思ったが、大丈夫そう。

 詳しく聞くとダンジョン内にも数回は冒険をしており、戦闘を見るのも初めてじゃないとか。


 ……逆に言えば、俺が一番経験が少ないんだよな。


 マサアキさんは冷静に残弾数の確認やマップの復習をしているし、ナナコさんに至ればドヤ顔。

 アヤにお姉さんらしい姿を見せられるのが嬉しそうだ。


「まだ行きの半分、油断しないで行こう、アヤ、みんな」

「うん、おにーちゃん!」


 今回だが、まっすぐ下層に降りる階段のある部屋を回るのではなく、チェックポイントとしてカードが置かれた部屋を回る様になっている。

 全員が同じ部屋を回らない上に時間経過があるので、カード設置後にモンスターがリポップ再登場している可能性が高い。

 だから、部屋のドアを開けるたびにCQC、ドアブリーチをしながら入る。


「これは俺の独り言だが……。今のところ、行動に問題は見られない。ただ、奢ったり慣れで油断はするなよ。それと配信視聴者にはコメント返しておけ」


 周囲から視線を外さずに飲み物を飲んでいるオカダ教官。

 ぼそりと「大声」で独り言を呟き、俺たちを声援してくれた。


「どっかから何か聞こえたけど、油断せずに行くよ。視聴者さん、ありがとうございます。じゃあ、出発しようか」


 マサアキさんの掛け声で冒険は再開。

 俺たちは防御魔法陣を踏み越え、ダンジョン第三層に踏み行った。


 ……俺、視聴者にどうコメントしたら良いのか、分からないや。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「お疲れさまです」

「敵、結構いやらしいから気を付けて」


 四層にもなれば、先行組ともすれ違う事も増えてくる。

 怪我をした者は殆ど見られないが、実戦慣れをしていない者が大半なので疲れ顔の人が多い。


「次、前二本先の四つ角、右側。敵数……7! 中型2、小型5。ホブゴブリン、ゴブリンの混成部隊。待ち伏せ!」


「了解。ハルトくん、どうしよう? 待ち伏せ相手じゃ先手は撃てないよね」


 マサアキさんの先行偵察で、敵が待ち構えているのが分かった。

 曲がり角での奇襲、モンスターでも頭を使ってくるのだ。


 ……CQCでも曲がり角や階段での戦闘は難しいって教えてもらったな。ここじゃ壁抜きが出来ないから、反対側から奇襲ってのは難しいか。


 俺は数秒考え、手持ちの武器でなんとかする作戦を提案する。


「でしたら、閃光弾と攻撃型手榴弾を時間差でぶち込んでからマサアキさんと俺が切り込むで良いでしょうか?」


「そうだね。で、一旦引いてからナナコさんの射撃で殲滅。このプランで行こう」


 ……武器で殺せる相手は武器で殺せ、魔法でしか出来ない事を魔法でやれ、ってのは魔法使いに対しての基本講座にあったな。


 俺は魔法でも出来る事を武器で行う事に決めた。

 まだ目的地に行く前、ここでマナを使い込むのは得策ではない。


「みんな、気を付けてね」


 心配そうな顔のアヤ。

 俺は彼女の頭を軽く撫で、安心させる。


「じゃあ、行こう!」

「おう!」


 俺たちの戦いは、まだまだ続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る