五歩目「イルイーニョ現象」です!

 「おはようライサ」


 こんな朝からお客さんでしょうか? 

 どうやら母に用があって来たみたいですね。

 私は朝ご飯を食べて、行きたくない学校に行く準備をしなければならないので、ご挨拶はまたの機会という事で。


「あら。珍しいですね。こんな朝に」

「近くにいたから」


 玄関の方でなにか話をしてるようです。

 食卓について、昨日の事を色々と思い出しながら呆けて朝ご飯を食べていると、足音が近づいてきます。


「おはようお姉ちゃん」

 ブバッ!!

 食べてるものを吹き出してしまいました。

 それがめっちゃお父さんの顔にかかっちゃいました。

 お父さんはビックリしてすぐさまタオルを持ってきて顔を拭きます。


 それはそうとビックリしたのは私の方です。

 この人は……いえ、この子はまさに昨日、森で出会った「イ」なんとかさんじゃありませんか!

 どうして家に……どうしてこんな早く、翌日に再会なんて。

 前回の意味深なナレーションが恥ずかしいじゃないですか。


「ヨーデル? この方と知り合いなの?」

「え。う、うん。なんていうかそのぉ」

 なんと言ったらいいものかと、もじもじしていると、ふわりと綺麗な長い銀髪を浮かばせ、イなんとかさんが抱きついてきました。

 

 わわわわわわわわわわわっわわわ。

 いい匂いがするううぅう!

『あらあらあら』

 父と母がほんのり顔を赤らめ、私達を見守ります。

 恥ずかしくて私の顔はきっと血よりも赤くなっていたでしょう。

 あと、なんかすごく気持ちいいです。

「お、お母さん……この子は?」

「この子って、あんた失礼だよ? この方は魔女のイルイーニョ様だよ」

 …………………………


「え、ええええええええ!!?」

 

 私は驚きのあまりに大声をあげてしまいました。

 この方があの……伝説の魔女の一人、イルイーニョ様だったなんて! もっと厳ついお婆ちゃんのような方を想像していましたが……可愛らしいお方でビックリです。

 でも言われてみれば、どこか神秘的なものを感じますし、オーラというかなんというか……いえ、可愛い女の子にしか見えません。


「ライサ。私もお姉ちゃんと朝ご飯したい」

「はいはい。今ご用意しますね」

 流れが自然過ぎませんか?

 魔女様が我が家に今! まさに今! いるのですよ!? その姿はほとんどの人が見た事無く、生ける伝説と云われる魔女様 ガッ!

「え? ああ。そーいえあんたは初めお会いするわね。イルイーニョ様は定期的に特製の薬を届けに来てくれてるのよ」

 母は現役時代、任務中に大怪我を負ってしまい、それが元で身体が弱く、病気にもなりがちなのです。

 だから薬を飲んでる姿はよく見ていました。

 なんでも怪我した時、助けてくれてのがイルイーニョ様で、それ以来の付き合いだという。

 

 全然知らなかった……

「ライサの料理は昔から美味しい。お土産もいつもくれる」

 餌付けかな。

 それはそうとて魔女様と朝ご飯なんて……緊張して喉を通りませんよ。

 おや? なんでしょう? 魔女様が私をジっと見て——

「お姉ちゃんの食べてるの、それおいしそう」

 すると魔女様は目をつぶり、口を大きく開け、あーんっと。

 はい、あーん。

 ……ついつい流れでやってしまいました。だって可愛いだもん。

「おいし〜い」

 お花のような笑顔が我が家の食卓に咲き誇りました。

 ところで昨日、森で出会った事は現実だったのでしょうか? 魔女様に聞いてみましょう。

 ……ふむふむ。なるほど。

 サッパリ分かりませんが、どうやらあの森は異界だそうで、私は魂の状態でその異界に飛ばされてしまったそうです。

 原因の一つに、何かすごいショックな事あったんじゃないか。 

 と、言ってました。

 魔女様はそこで何をされてたんですか? と聞くと、散歩しててお腹が空いていた。

 と、なんとも微笑ましいエピソードを聞かせてくれました。


「はい。お待たせしました」

 母が魔女様の分のご飯を持ってきて「一家団欒」の食事の時間になりました。

 もはや「魔女」とか「異界」とかどうでもいいのです。家族の笑顔がある。

 それが一番大事なのです。

「ところであんた。留年したんだって?」

「お、そうだった。ヨーデル。そーいう事はきちんとお父さんとお母さんに言わないと」

 我が家の食卓から笑顔が消えました。

 儚い時間でありました。

 昨日、早速先生から連絡があったそうで……そりゃそうですよね。前代未聞の事なのですから。

 次に体から一気に血の気が引き、顔面蒼白。背筋に一本、すぅーっと寒気が走り、全身がガタガタ震え始めました。

「あばばばばば」

 私は正気を失い、ただただ震える事しか出来ません。


「エーデルに連絡したら、すぐ帰るって言ってたわよ」

「あばばばばばばばばばば」

 どうしましょう。喋れません。

「お姉ちゃん留年したの?」 

 やめて下さい。そんな無垢な瞳で私を姉と言わないで下さい。

 呼吸しててすいません。

「そう落ち込むな。もう一年しっかり学べると思えば貴重な経験じゃないか。周りの目なんか気にするなよ?」

「まぁあんたなりのペースで頑張りなさい。何かあったらお母さんも手伝うから。一応先輩魔法使いだしね」


 お父さん……お母さん……ありがとうございます……私、諦めません!


「おいし〜い」

 魔女様は私と違い、とても美味しそうにご飯を食べていますね!

「ところであんた、遅刻するわよ」 ()



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エンディングと次歩予告


まさかあの時の女の子が魔女様だったなんて……

それにしても……本当にちっさくてかわいい。こんな子が「お姉ちゃん」て呼んでくれるなんて、私は…私は!

留年の事は呆気なくバレてしまいましたが、意外と大事にならなくて良かったです。まぁ、後は私のお姉ちゃんがどう出てくるか…あ、吐きそうです


それでは次歩の弱過ぎ魔法使いのヨーデルエルフェンフィート

【金髪と陽キャ】です!

またお会いできたら嬉しいです!

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