005
「そもそもお金は奴隷商に支払う為であって、奴隷には支払う義務はないんです。私はお金がないから代わりを代償にしましたけど」
遠くを見るような俺にそう言った。腕を組んで偉そうに。
「代償ってなんだよ?」
「残りの寿命の半分です」
…………今なんて言った?
「これはまあ、誰でもできるって訳じゃなくて、代償の代わりに恩恵もあるので、まあ良しですよ」
満足そうに頷くセレスの両肩を掴んだ。
「な、なななななななななななな何ですか!?私に欲情しましたか!?確かに私は可愛くて愛らしくて素敵で綺麗で美人で優しくて非の打ち所がない美少女ですが、あなたとは主従関係なので、そう言うのはお断りです!!そもそも愛玩奴隷を願ったのではなく、戦闘奴隷を欲したのですから!!そりゃ、あの、多少の恩恵には与りましたので、あなたへの好感度は高いですが……あ、いや、何というか別にいいと言うか、願ったり叶ったりかもしれませんけど、お断りも今すぐじゃなく後ならいいとの意味ですしね!!」
真っ赤になってごにゃごにゃ言うが……
「随分と自己賛美が過ぎるが、実際可愛いからまあいいとして、寿命の半分を使ってまでなんで俺を連れて来た!?」
「で、ですから、可愛い!?い、いえ、解っているのであればいいのです……」
「解ったから質問に答えろ」
「え?えーっと、寿命の半分を使って願う主従契約術はですね、霊力が高くなければ使えないんです。低い者が使うと霊力が枯渇するので死んじゃいますし。あ、霊力とは、自分の内なる魂の力と言うか……」
「そんな内なるサクラの話はどうでもいいが、寿命の半分とは、その霊力とやらに関係しているのか?」
「サクラ!?誰ですかその女!!主人がいるにもかかわらず、他の女の名前を呼ぶなんて!!キーッ!!」
逆に両腕をがっちり握られてグラングラン揺さぶられた。しかも握力МAXのようで、意外と痛い。なんかセレス、血涙を流したような顔になっているし。
しかし、流石にナルトは知らなかったか。ワールドワイドな漫画だが、異界にまでは浸透していなかったか。
ともあれ振り切った。「あっ」とか言ってセレスが倒れた。その際スカートが捲れて白い太ももから生えるパンツが見えた。大きくもなく、小さくもない、丁度良いお尻に装備されていたのは、純白!
そんなのどうでもいいわ!!いや、パンツはラッキーだが、それはまあ、後でだ。後でいろいろ……な?
「内なるサクラは気にすんな。少なくとも現実の女じゃねーから。俺を連れてきた理由は?」
「いたたた……え?主人を倒した事への謝罪は無し?」
スカートを直しながら意外そうな顔。いや、その顔も可愛いけども!
「いいから先に進め。ぶっ飛ばすぞ」
拳を掲げたらビクビクと両手でガードするようにして身を引かせた。お前主人とか言っていたよな?奴隷の拳に怯えるなよ。マジなんなのこいつ?可愛いからいいけど。可愛いは正義だから仕方ないし。
「え、えーっとですね。寿命の半分を使うのは理由がありまして……奴隷に支払う対価と、理想通りの奴隷が貰えるからです……」
やはりビクビクしながら答えた。理想通り?
「じゃあセレスの理想は何だ?ラーメン作れる奴隷が欲しかったのか?」
俺はラーメン屋だから、成程、それなら理想通りだ。ラーメン作れる奴が欲しいからって寿命の半分を使うとは考えにくいが。
「あの……強くて、優しくて、かっこよくて、誠実で……何より私を絶対に裏切らない者、です……」
掲げた拳を下ろして脱力した。ほぼ同時に顔が熱くなった。
そ、そうか。そんな要望をなぁ……ふ、ふぅん……そ、そうか。へぇ~……ま、まあなんだ。セレスの理想通りの男が俺って事か……うん。まあ、うん……
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