006
何となく無言になった。向かい合って共に顔を伏せながら。
結構な静寂、それを打ち破ったのは、「ぐううううううううううう~……」との音。
顔を上げると、セレスも顔を上げた。しかも真っ赤になっていた。
「違います違います違います。お腹が鳴ったのではなく、えっと、そう!鼻息ですこの音!!」
両手をバタバタさせての言い訳だが、お腹が鳴った方がまだ通りがいいと思うが。なんだよ鼻息って……
しかし、もうそんな時間か。仕込み時間から何時間経ったんだろ?
……なんか大事な事を忘れているような気がするが……なんだっけ?まあいいや、後で多分思い出すだろう。
「セレス、腹減ったんだが、話を一旦中断してご飯くれない?」
「え?そ、そうですね。私はそうでもないんですが、奴隷を飢えさせる訳にはいかないですし」
そう言って立ち上がる。いや、俺の方が腹減ってないぞ絶対に。気を遣っての発言だが、見栄を張って返されるとなぁ……
それは兎も角、見た感じキッチンはあるが、コンロじゃなく炭火での調理のようだし、冷蔵庫も無さ気だ。保存はどうしているんだろうか?
しかし、セレスが向かったのはキッチンではなく、その横の戸棚。そこをごそごそ探って何かを皿に盛って……
「はいどうぞ」
満面の笑みで出てきたのは……
「……これなんだ?」
茶色と白の一センチ幅の棒状の物体に指を差して訪ねた。
「あなたの世界にはパンは無いのですか?これはパンの耳です。天界最安値の主食です」
なんか超得意気に胸を張って、指をタクトのように振って答えた。
答えられても!!
「パンの耳!?お前貴族だろ!?元とは言え貴族なのに、パンの耳!?」
「お前、じゃなくセレスです!さっきも言いましたよね?私は貧乏ですって。貧乏人でも買える主食ですよこれは」
いや、確かにそう言ったけれども!!パンの耳で飢えを凌いでいるのかよ!!元とは言え貴族なのに!?
「ご安心ください。これは主食。メインはもちろんありますよ」
そう言って再び戸棚に戻ってごそごそと。そして皿に盛られて出されたメインとやらは……
「鶏の骨付き肉です。ジンジャーをスライスして添えました」
超ドヤ顔だった。鼻息がものすごく荒かったし。だけどこれは……
「鶏ガラじゃねーか!!」
「よく見てください。骨にお肉がちょっとついているでしょ?」
指差した先には確かに肉が付いていた。だけどこれって骨に付着して取り切れなかった肉だよね!?
メインがこれ!?この世界に生活保護とかないの!?施設でももっとマシな物食わせてくれたぞ!!
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