魔王軍

「何か、魔神と半月近く戦っていた気がする」


「我はこれまで生きていた何千年より濃い一時を過ごした気がするぞ」


 僕と魔神は互いに頷き合う。

 なんやかんやで、魔神は自分が今まで戦ってきた中でも最も強い相手だったし、途中で入ってきたミュートスの存在に、初めて人前に見せた己の祭壇。

 すっごい長い時間戦っていたような気がする。


「だから忘れていても仕方ない」


「たった一日。それだけ別の存在と戦っていただけで忘れ去られる魔王軍可哀想すぎるだろう。重要拠点に大量の罠を設置させられているというのに」


 そんな僕の言葉に対して呆れながらリリスが口を開く。


「……魔神様もですよ?魔王軍とあれだけ協力していたのに」


 そして、それに続いてエウリアも魔神へと話を向ける。


「えっ?お前ってば魔王軍とも繋がりあったの?」


 それを受けて僕は魔神へと驚愕の言葉と視線を向ける。


「ん?あぁ、そうだとも。同じ魔に連なるものであるからな。向こうが時折供物をもってきながらお願いごとをしてきたので、ちゃんと叶えてやっていた。奴らが差し出してくる供物は中々なものであったからな」


「……ねぇ、魔神を通して魔王軍から様々な物資を徴収すること出来ないかな?貢物ということで」


「別にしても良いが、一応対価であったからな。それ相応の対価をこちらも示す必要があるのだが」


「あー、そうかも?なら、僕を足止めするってのでいいんじゃない?それだけで十分な対価になるんじゃない?」


「それ、全然対価として釣り合っていないだろう。お前ひとりで魔王軍を相手に出来るのではないか?というか、わざわざ貢物なんていう面倒なことをしなくとも一人で潰せるだろう」


「……まぁ、確かに?」


 僕は魔神の言葉に頷く。


「であればもう何でもいいだろう」


「……確かに?」


「それで?お前は魔王軍をどうするんだ?人間である以上、潰すために動くのか?」


「うーん、どうしよっか」


 僕は魔神の言葉を受けて首をかしげるにとどまるのだった。

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