解散
「ありがとう、ございます」
僕の言葉を受け、ミュートスは儚いながらもそれでも元気の戻った元気な笑みを浮かべて告げる。
「少しは希望が持てました」
「それなら良かった」
僕はちゃんと持ち直して笑みを浮かべている彼女に笑顔で返す。
「それじゃあ、あそこにいる黒い粘性人型実体を封印するから一人ずつミュートスの方で管理していてくれる?」
「……良いんですか?」
「何が?ミュートスのところの領民なんだから引き取ってくれなきゃ困るんだけど」
「い、いえ……治療法の確立のために使うのかと」
「いや、どんな形になってしまったとはいえ、元はうちの国民。国を守る剣たるうちの家がおいそれと捌けるわけないじゃん……彼らはミュートスが引き取ってよ、その代わり。僕が勢い余って倒しちゃった分は回収させて。何のサンプルもないのは不味いから」
僕の持っている人体実験の用の人間もそこまでの数はいない。
一応、生産も行っているけど育つまでに時間があるから使えないし、サンプルは欲しい。
「それは、当然です。こちらがお願いする立場ですから」
「よし……ということ、でだ」
僕はミュートスの言葉に頷いた後、周りを見渡す。
「この後みんなはどうする……?といっても、僕はあまり関係ないけど」
「それはどうして?」
「僕はちょっとしばらく暇をもらうから。この子たちが治るかどうか、確認するためにはまず、制作者であるエウリアを捕まえないといけないし、何よりも黒い粘性人型実体を探さないといけないから」
僕がやらなくてはならないことは存外多い……何よりも魔神を相手に実験したい。魔王なんて知ったことではない。
既にだいぶ魔王軍に攻撃を与えているし、もう十分でしょ。
「なるほど……見つけられるの?」
「既に辺りはつけているし、魔法でマーキングも残しているから問題ないよ」
僕はお姉ちゃんの疑問に答える。
「それじゃあ、僕はこの辺りで!黒い粘性人型実体の治療法がわかったら連絡するから!またね!」
そして、僕は淡々と自分のことだけを伝えた後、この場を飛び立つのだった。
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