可能性
「そう、ですか……」
僕の言葉を聞いたミュートスは表情を沈ませて俯いてしまう。
「悪いけ……いつつっ!?」
そんなミュートスに重ねて言葉を告げようと口を開いた僕の耳を目の前にいるお姉ちゃんが思いっきり引っ張ってくる。
「悲しんでいる彼女に続けて何を言おうとしているの?悪いじゃないわよ?」
そして、お姉ちゃんは僕にジト目を向けながら口を開く。
「一度、落としてからの方がいいじゃん!?無理かも、無理かも、で期待を落としておきたいんだよ!僕だってあるかな!?って気持ちと、ないかな!?という気持ちが混ざり合っているんだ。というかこの場であれと戦ったの僕だけだよね!?戦ったからこそわかる感覚みたいなのもあるの!」
僕は余計なことを言うなと告げるお姉ちゃんに対して不満の声を上げる。
「ネージュ」
そんな僕の顔を両手でつかんで強引に自分と視線を合わせてくる。
「お姉ちゃんと誓って。誰かのために力を振るうって。私……ネージュの過去を知らないから。軽はずみに研究を辞めろとは言えない。でも、その研究を他人を傷つけるために使ってほしくない。その研究を誰かのためになるようにしてほしい。それなら、法律に反さない形でなら実験を続けることも認めるわ。私だって貴族。大のために小を切り捨てるのが現実なのだとわかっているから」
「僕だってそれくらいはわかっているし、最後の一線を越えるつもりはないよ」
これでも僕は人格者である。
倫理観を失ったようなマッドサイエンティストと同じにしないでほしい。法を犯したことなど一度もない!
「……それなら、もういいわ。それで?ミュートスちゃんのほうは、大丈夫そうなの?」
「だから言っているじゃん。まだわからないって、何度も!」
何度も言っている答えを僕はここでも返す。
「ミュートス!落ち込むな!笑え、そして任せて!何とか出来る可能性もあるから!」
そして、僕は立ち上がって俯いているミュートスの顔を強引に掴んで上へと向けさせながら告げるのであった。
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