復讐

「はい、おわーり」


 魔法ではた目からは完全に消滅させた様子に見せながら、ひそかに別の場所へとさせた隔離した僕は満足げに頷く。


「よっと」


 そして、僕は自分の指を弾いて遥か上空。

 自分の貼った結界の中にいたマリーヌたちを再び自分の元へと舞い戻す。

 ちなみにエウリアは魔神と同じ場所に転送済みである。


「お前ら二人は戻って来い」


 リリスにエウリアは無事であるということも合わせて伝えながら、僕はリリスとグリムの二人を自分の中に戻す。


「さて……と、魔神は倒したよ」


 僕は未だに呆然自失としているミュートスの前に立ち、静かに声をかける。


「……そう、ですね。ありがとう、ございます」


「これでミュートスを狙っていた者はいなくなり、お前の領地にも安寧が訪れる。ほら、どうした?すべてうまくいった……笑いなよ」


「……ですが、もう、みんなは帰ってこない」


「でも、やるべきことはわかっているだろう?」


「……はい」


「なら、もういいだろう。笑う必要はない。頼れる人の前では感情を爆発させろ、誰かに縋りついて泣きつけ。だが、貴族であるならその姿を国民には見せるなよ。ほれ、マリーヌ寄り添ってやれ」


 僕は自分の言葉に頷いたミュートスに満足して彼女の元からそっと離れる。

 そして、それとは対称的にマリーヌとフィアがミュートスの方に寄っていく。


「ところでネージュ」


 そんな中で、お姉ちゃんだけは僕の元に近づいてくる。


「……ん?何、お姉ちゃん」


「何か、今はいない女性が実験で作っていたとか言っていたけど、それはどういうことなのかな?……というか、あの女性って悪魔だよね?どうなっているの?」


 そして、お姉ちゃんが口にするのはリリスに関する事柄であった。


「……すぅ」


 僕はお姉ちゃんの告げた言葉に表情を引き攣らせて静かに息を吸う。


「……そ、それじゃあ、今日のところは解散ということで!」


「待ちなさいっ!逃がしはしないわよ!」


 僕は逃げようとしたところをお姉ちゃんに取り抑えられ、


「やめろぉ!僕は無罪だァ!」


 無様に悲鳴を上げるのだった。

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