決着
「うぅ……まだ、無理があったぁ」
自分の全て。
そうとも言える、たった一つの魔法の発動を終えた僕は自分の吐いた血に溺れながら呆然と声を漏らす。
「ふぅー、でも。大丈夫」
それでも、僕はふらふらになる体を起こしてゆっくりと立ち上がる。
「よぉー、大丈夫か?」
そして、無様にも床へと倒れている魔神へと声を向ける。
「……何だ、あれは。あれは、私のような亜神とは違う。真に、神として生まれ、世界を管理し、人々からの尊敬を集める神々の一柱だ。そんなものを、……降ろしたのか?」
「そうだね」
震えながら告げる魔神の言葉に僕は頷く。
「何故、出来る」
「僕は神様に会ったことがあるんだ」
小さなころ。
前世で僕がまだ十歳にもなっていない頃に、僕は自分の両親が目の前で殺された。
それで、呆然自失としていた僕の前に立ったのが神様であった。
「僕の、生涯の目標は再び神様に会うこと。あの魔法は、僕の出会った神様を降ろすためのもの。そして、ここはその魔法のための祭壇。そのための魔法であり、研究だ。別に僕は魔法が好きなわけじゃない。神様が好きなんだ」
それ以来、僕の人生の目標は神様に再び会うことになった。
前世では神様に追いつける分野が、既に廃れてしまっていたこともあってあまり真髄にまで近づけなかった。
それでも、この世界には魔法という神様に近づける便利な道具がある。
死んで良かった。
もう死ぬのは嫌だ。車にはねられた時の衝撃も、痛みも、今でも色濃く残っている。怖い。痛い。
それでも、神様に近づけたのだから……死んでよかった。
「……ハッ。狂信者の類か。頭脳明晰で犠牲もいとわない狂信者。面倒な、相手に我もぶち当たったものだ」
「失礼なことを言うねぇ」
僕の言葉に対して心底恐怖に染まった瞳を向けながら告げる魔神の言葉に苦笑しながら、彼女へと自分の手の平を向ける。
「私を、どうするつもりだ」
「それはおいおい考えるさ」
僕は未だに神を降ろした後遺症を引きずる体で魔法を唱え、何も出来ずに地べたを這いずり回る魔神へと最後の魔法を叩きつけるのだった。
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