静かに、厳かに。

 神聖でもって。

 誰にも伝わらぬ、そんな言葉を上げるネージュの身体が、跳ね上がる。

 膨大な魔力と神力が膨れ上がり、彼の体がゆっくりと震え始める。


「……ッ」

 

 ネージュの身体がゆっくりと浮かび上がり、白く染まった瞳の中から赤き涙がゆっくりと流れ始める。

 そして、口から何か、白く揺らめく湯気みたいなのが溢れ始める。


「……ぁ、あぁ……あぁ、あぁぁぁぁぁぁ」


 何かに、繋がる。

 ネージュの肉体が、どこかへと繋がり、新しい世界をこの世界に顕現させ始める。


「なに、もの……何のなのだ」


 姿を見せたのは、魔神を超えた以上の何かである。

 ネージュの体を通して、鳥居の外から半透明な指がまず初めに姿を見せ、その次には手の平、そして腕全体が形を現し始める。


「……」


 顕現したのはまさしく神である。

 魔神のような、半端な亜人なのではなく、ただただ神力によってのみ体を構成される、創生の頃より存在せし存在。

 そんな存在の腕がゆっくりと魔神の方に近づいてくる。


「……ぁっ」


 それを前にしても、魔神は何も出来ない。

 ただただ、自分の方へと近づいてくる圧倒的な上位存在を前に固まる他ない。蛇に睨まれた蛙の状態であった。


「……い、いや」


 そんな魔神の方へとゆっくり神の腕が迫っていく。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」


 そして、神に触れられた魔神は、一気のその身に持っていた魔力と神力を抜かれ、絶叫を上げながらその場に倒れる。

 魔力も神力も回復できるのだが……それでも、しばらくの間は戦うことが出来ないだろう。


「……ぁ、あぁ」


 これで魔神は戦闘不能。完全敗北である。

 ただし。


「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええ」


 この魔法を発動させた当の本人であるネージュも。


「……おぇ、おぇ、げほっ!げほっ!」


 魔法を解除させると共に彼も彼で、地面に倒れて口からを血を大量に吐き出し続けているのだった。

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