廃神社
赤き月は降りて、天より落ちて地平線へと沈みゆく赤き夕方の太陽。
黒く染まった空も少しだけ薄暗い朱色の空へと彩られる。
「……、なんだ。ここは……いや!あ、ありえない!人の子が世界創生を発動させるなど!あまつさえ、この我のを塗り替えて!」
空より降りてきた幾つもの鳥居によって空間を捻じ曲げられて別の顔を見せる僕の神域に魔神は困惑の声を上げる。
「ふふっ」
僕は魔神の頭から足を離して、彼女から離れて。
既に赤が完全に剥がれ落ち、多くの苔に覆われた鳥居の下に立つ僕はゆっくりと己の視線を向ける。
これまた寂れて崩れ落ちそうになっている神社の社殿の前で転がっている魔神の方へと。
「ここは僕の祭壇」
僕個人が持つ神域。
どこまでも続く、赤き血の湖───それを塗りつぶす形で出現させた廃神社。
そこで僕はいつものように踊る。
「……見せてあげるよ、本当の神様というのを。お前のような、半端もの、くだらいない紛い物なんかとは違う。本物ってやつを」
ここは僕の神域ではなく、祭壇。
本来あるべき発動者にとって都合の良い事象が起こるようになるなどの副次的効果も、その本質である特異効果も犠牲にして。
ただ一つの、僕という存在が全てとも言えるたった一つの魔法の発動を補助するためだけに作り出した神域こと、祭壇。
「ははっ」
そこに立つ僕は両手を合わし、自分の中にある膨大な魔力どころか……その奥側。
自分の中に封じてある、荒れ狂う神力すらも解放させる。
「ば、馬鹿なッ!?な、何故!人の子が神力を……まさ、か。本当に人ではないというのか!?」
僕の見せた神力の解放。
それを前にする魔神が動揺の声を上げる。
「はは、そんなことはないよ。僕だってちゃんと人さ……少し、普通の人とは違うかもだけど」
そんな魔神に対して僕は軽い口調で答える。
「ひふみ よいむなや こともちろらね しきる ゆゐつわぬ そをたはめくか うおえ にさりへて のますあせゑほれけ」
そして、僕は静かに祝詞を唱え始めるのだった。
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