神域

「……は?」


 魔神の神域が齎す特異効果は何なのか。

 それは未だわからないままではあるが、それでもたった腕の一振りで魔神の攻撃を無効化してみせた僕を前にして、魔神が驚愕の表情を浮かべる。


「そ、そんな……そんなバカな!」


 そして、続く形で振るわれる魔神の攻撃。

 この場全体に広がっている自然が齎す災禍の悉くを一瞬で蹴散らせて見せる。


「こ、ここは……我の神域、足るぞ?何故、そこに立ち、人の子風情がそこに立っていられるのだ!?」


「別に、世界を超えることくらい難しいことでもない」


 世界全体が齎してくる不運、敵意。


「がはっ!?」

 

 それらすべてを力でねじ伏せて見せる僕は容易に魔神との距離を詰めてその腹に強烈な膝蹴りを叩き込む。


「げほっ、げほっ……どう、じでっ!」


「ハッ」

 

 僕は地面に倒れ伏しながらも驚愕の声を漏らしている魔神を上から鼻で笑いながら、彼女の頭へと容赦なく足をつけて地面へと押し付ける。


「ぐぐぐ………っ」


「愚か者に見せてやろう……本当の神というものを」


 僕は魔神の頭を足で踏みつけてまま両手を合わせる。


「……ぶくっ、ぶく!ま、ざがぁぁぁぁぁぁ!」


 口に水が入っている魔神が上手く喋れていない中で告げる言葉。


「ふっ」


 その言葉の期待に沿うように僕は魔法を発動させる。



「世界創生」



 発動させるのは先ほど魔神がやっていたものとまったくもって同じ。

 彩どりな自然に覆われていた世界は殺風景な地獄へと変貌する。

 壁は消え、天井も消え、ただひたすらに薄く引かれた赤い水が永遠に、地平線の果てにまで伸びている。

 空は暗く染まり、赤い月だけが不気味に輝いている。


「飲み干せ」


 そんな殺風景な世界において、その何もない天の虚空より幾つもの赤いものが、鳥居が雨のように大量に降り注いでくる。


「そして、顕現せよ」


 大量に落ちてくる鳥居による地響き。

 それと共にぐにゃりと空間ごとねじれていくこの場の中で僕は両手を広げて天へと言葉を届かせていくのだった。

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