最期の切り札
僕から無様に逃げ出した魔神は、それでもこちらへと敵意を失っていない視線を向けてくる。
まだ、何か出来ることがあるというのだろうか。
「もはやこちらの世界への妄念など捨てたッ……!貴様は、ここで必ず殺す!」
そんな僕の疑問を他所に、魔神は確固たる自信と殺意をもって四本ある手を合わせ、魔力を高め始める。
どうやら……ちゃんとまだ手札があるようだ。
「ひひひ……どうせ、我の行いを止めるつもりなどないであろう?人の子よ。それこそが敗因よ」
戦闘中とは思えない、非常に無防備で隙だらけの姿を見せる魔神は、それでも僕への奇妙な信頼感でもって言葉を述べる。
「さっさとやればいいさ……その上で、お前という存在を上から押しつぶしてやる」
確かに、まったくもってその通りである。
僕は不適に笑う魔神に対して素っ気ない言葉を返し、その場で腕を組んで立つ。
「……まさかっ!」
そんな中で、遠くの方の結界でこちらの方の戦いを見ていたリリスが声を上げる。
「さ、流石に!流石にアレは駄目だ!!!あれを、そのままにするのは不味いぞ!ネージュ!」
そして、彼女は焦ったように警戒するよう告げてくる。
「……へぇ?面白そうじゃん」
そんなことを言われても僕の興味心を刺激されるだけである。
ちょっぴりいうと、神とか名乗るくせにこんな弱いのかと少しだけがっかりしていたのだ。
ここから先に何かあると言われたら……流石にちょっと興味が惹かれちゃうな。
「……駄目だ、あいつ」
「当たり前じゃない……あれは、もう病気よ」
「忘れていたよ、それを……あいつは難病だったな」
あいつら、後で覚えておけよ。
僕は遠慮なくぼろくそに叩いてくれているリリスとグリムを後で〆ることを決意する。
「……は、はは」
そんなことを考えている間に、どうやら向こうさんの準備が終わったようだ。
「見ていろ!人の子!これが、本当の魔神たる我の本気である!」
そして、魔神は声高らかに宣言しながら魔力を開放するのであった。
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