恐怖

「ふざ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」


 僕に対して、体を震わせる魔神は大きな声を上げる。


「我は世界の頂点に至りし、神たるぞ!?神力の持ち主であるぞ!なぜ、何故人の子如きが我に近づくというのだ!」


「……」


「不条理!不可解!不可視!何故!何故、人の身でそこまで!我は神の領域へと踏み込んだのだぞ!」


「それは今、関係ないだろう?」

 

 わめく魔神との距離を詰めた僕はそのまま一切の容赦なく彼女の腹へと膝蹴りを叩き込んでくる。


「げほっ、げほっ」


 それを受けた魔神は無様に地面へと倒れ伏して咳を漏らす。


「よっと」


 そんな魔神の髪を浮かんだ僕は強引に彼女の体を起こしてやる。


「安心しろ、魔神。僕はお前とて殺す」


 そして、次に告げるのは殺害予告である。


「は、はは。無理だ。我の本体は魔神ににある。ここで殺したところで意味などなく、無意味だ。我は、終わらない」

 

 僕の言葉に対して、小さく苦笑を漏らした魔神はそのまま不敵な笑みを浮かべてくる。そこにあるのは死なないという絶対の自信。

 ここにまで来て、未だに魔神が恥辱にしか体を震わせておらず、僕への恐怖を抱いていないのは自分が死なないという自信からだ。


「神を見たのはお前が初ではない。知っているぞ、僕は神も、ついでに言うと悪魔もな。ここまでいいようにやられて、まだ自分が死なないとでも思っているの?」


 だが、それを僕は有無を言わさずに潰しに行く。


「……ひっ!?」


 ここにきて、ようやく魔神の表情に恐怖が浮かぶ。


「神力は存外潰せるのだよ」


 僕はそんな恐怖に彩られる魔神の顔を優しく包み込みながら笑みを浮かべる。


「……ぁ、ぁ……ぁぁ」


「悪魔の殺し方は、リリスを利用することで開発した。神力を潰す術も確立してある。殺せるよ、僕は。君を」


「うわぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」


 ようやくになって。

 魔神は恐怖で体を震わせながら、逃げるように僕の腕を振り払って地べたを這いずるのだった。

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