反撃

 互いに向き合う僕と魔神。

 そんな中で先に動き出したのは僕だった。


「ぐがっ!?」


 一瞬にして魔神との距離を詰めた僕はそのまま前蹴りで、彼女の頭を蹴り飛ばす。

 そのまま流れるように僕は軸足を切り替え、先ほど蹴り込んだ足とは違う足で魔神の腹へと踵落としを叩き込む。


「こ、の……程度!」


 一度は地面を跳ねて、空を舞い、地面を転がる。


「あぁぁ!」


 それでも、闘志を失わなかった魔神は、追撃の手を加えなかった僕に対して地面に倒れた態勢のまま蹴りを放ってくる。

 そんな蹴りを僕は軽くジャンプで後方に下がることで回避する。


「ふんっ!」


 ジャンプの後。

 地面に足をつけたきり、体を動かすことのなかった僕へと魔神はその四つの腕を力強く握りしめながらこちらの方へと近づいてくる。


「遅い」


 だが、魔神が僕の元に届くよりも。

 ワンテンポ遅れて地面を蹴った僕の蹴りが彼女の頭に突き刺さる方が早かった。


「う、ぐぐ」


 魔神は僕の蹴りを受けながらも、何とかその場に堪え、無様な格好のまま腕を振るう。


「……」


 僕は自分へと向けられた魔神の腕を右腕で受け止める。

 そんな僕に向かって魔神は更に腕を振るい、それをまた、僕が左腕で受け止める。


「……ハッ」


 だが、僕の腕は二つ。

 それに対して魔神の腕は四つ。

 自分の腕で防ぐことの出来なかった魔神の三本目の腕が僕のお腹の方へと伸び、そのまま何の障害にぶつかることもなく直撃する。


「なっ……」


 だがしかし。

 確実に、僕のお腹へとクリーンヒットしたはずの一撃は何の影響も与えなかった。


「蠅でも止まったかな?」


 実際に、魔神の一撃は僕に何の痛みも与えていない。


「……ぁ、あ、……そんなことが」


 まともに攻撃を受けても一切堪えた様子を見せない僕に対して魔神は驚愕の声を漏らしながら後ずさり始める。


「どうした?まだ、僕は半分の力しか出していないよ?」


 既に魔神が持っていた上位存在としての誇りなど完全に失ってしまい、ただ震えるだけとなってしまった魔神へと僕は小さな笑みと共に告げるのだった。

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